大屋の郷愁風景

兵庫県大屋町<市場町・産業町> 地図(筏)地図(大屋市場)<養父市>
町並度 6 非俗化度 10 −但馬地方における養蚕業の中心地であった−





筏の町並



筏の町並


 但馬地方の南西部にある大屋町は円山川の支流大屋川に沿い細長く東西に広がるわずかな平地に沿い集落が点在している。大屋川のさらに支流の明延川を遡ると峠越しに播磨地方に接する。
 その合流点は播磨との文化の交流もあって古くから町が成立していたらしい。現在も大屋市場という地名が残り、かつての賑わいが想像できる。古い記録によると毎年三回、五日間ほど定期市が開かれ、各地の産物と地元の特産品が多数取引されたのだろう。
 中でもこの大屋川流域で盛んだったのが養蚕業であった。現在でもこの周辺では、養蚕業を行うための独特の家屋の造りを、町並景観の最大の特徴として見ることが出来る。
 一階部は居住空間、二階は養蚕のためのスペースである。屋根には換気、湿気を放つための小屋根が開かれている。そしてこの地で一番特筆されるものが、三階建の養蚕家屋があることだ。建物の全高は一般的な二階建ての古い家屋と大差ないが、漆喰で固められた二階部に、二段にわたって窓が穿たれていることからその存在を知る。広い作業面積を稼ぐ合理的な造りだ。
 また窓の配置も特徴的で、多くは左右対称になっておらず、黄身がかった漆喰の壁に穿たれた窓の周囲は白漆喰の縁取りが施してあり、芸術的ともいえる外観であった。
 大屋市場から大屋川を5kmほど遡った筏地区ではとくにその特徴が目立つ。養蚕業を生業とする零細な農村に過ぎなかったのだろうが、但馬の養蚕集落の真骨頂のような雰囲気で、価値ある集落である。
 一方大屋市場も地域の商いの中心であったらしい色が町並のあちこちに残っていた。こちらは軒を接する町場風の家並が主で、うだつを両端に構えた旧家もあり、瓦の色は黒であった。但馬の町並の特徴がよく現れていた。
 うだつは本来防火(類焼の防止)、防風のための袖壁として軒を接した町並で見られるのが普通なのだが、但馬では一軒屋でも見られ、この大屋市場では塀に囲まれた屋敷の裏手にある土蔵にうだつがかかっているのが見られた。本来の目的を外れた面白いうだつの設置例が、この地域では見られる。
 

大屋市場の町並



大屋市場の町並



大屋市場の町並
訪問日:2006.05.27 TOP 町並INDEX