大杉の郷愁風景

兵庫県大屋町<産業町・農村集落> 地図 <養父市>
町並度 5 非俗化度 6 −養蚕農家建築が濃厚に見られる集落−





木造多層階の養蚕農家が多く残る大杉集落の風景


 大屋町大杉は町の中心から西へ1kmほど、円山川支流の大屋川左岸に集落が展開する。地名の由来は大きな杉が村の目印になっていたことに因むともいわれる。
 この地区には独特の多層階建養蚕住宅が集中して残っているとして、2017年に重要伝統的建造物群保存地区への選定を受けている。
 この地域では近代養蚕の盛んになった明治中期ごろから三階建の養蚕農家が建てられた。大きく壁の立上がった二・三階部が特徴で、屋根には気抜きの屋根が取り付けてある。芸術的ともいえる迫力を見るものに感じさせる。二・三階間に軒庇のあるものや、土壁のままのものもあれば黄味を帯びた漆喰が施されたものもあるなど建物により違いはあるが基本的な構造・外観の統一感がある。
 大杉の集落は小規模で川向うの県道を通過してしまいそうなところであるが、母屋27棟のうち12棟が三階建の養蚕住宅で占められているとされ、その比率の高さや土蔵、寺社、石垣などの配置からも伝統的な養蚕を生業にしてきた集落の姿を濃く残しており、貴重性の高いものといえる。
 歩いていると、外部資本による養蚕農家を利用した宿泊施設など、観光客を迎え入れるような施設が出現しているのが気になる。保存地区なので景観的に大きく変化してしまうことはないだろうが、そのような動きは最小限にとどめていただきたいものである。
 




 



 
   
訪問日:2021.06.26 TOP 町並INDEX