六郷の郷愁風景

秋田県六郷町【在郷町】 地図 
 
町並度 4 非俗化度 6  −豊かな水資源を基盤に近隣屈指の商業が発達した町−





六郷の町並
 六郷は仙北地域といわれる県中部の内陸平野南部、東に高い地形で西部は低平な水田地帯となっている。町の中心は緩やかな扇状地上にあり、その地形的恩恵を十二分に受けて町の歴史を刻んできたところである。
 


代表する造り酒屋の建物




 

 中世には六郷氏の支配する城下町であり、これが最も古い歴史といえよう。既に江戸期を迎える前には多くの町が成立し、またそれぞれ繁栄していたという。殊に商業の発達は近郷に先立つ先進的なもので、特に酒造が特筆される。
 また藩政期に入ると宿駅に指定されたこともあって、周辺農村からの物資の集結、人々の往来の要ともなり一層の発展をしめした。
横手や角館などの中枢的な町とも程よい距離にあり、またそれらより広範な農村を後背地として抱えていたために、物資の中継・取次地として、重要な在郷商業町として位置づけられていた。
 月に12日も市が開かれるほど商業が盛んで、売上金を糧に農民に土地の貸付を行う者、さらに西国各地から移り住んでくる者もあったほどだという。
 その繁栄を底支えしていたものは、豊かな水と言い切ってよいかもしれない。それほど湧水地が多く、郊外を合せると70箇所にも及ぶという。市街中心にも数多く湧出している。六郷は扇状地という独特の地形の上にあり、扇頂から扇央にかけて地下を流れ下っていた山地からの水脈が、この付近で一斉に地上に自噴しているのである。或るものは屋敷地の中庭から静かに湧き出しており、又他のものは住宅地の一角、道路脇にぽっかりと泉を湛えている。工場敷地内に水が湧き出している箇所もあった。サイダーなどに加工されているという。
 中心街には造り酒屋の厳かな姿を中心に、大柄な見応えのする伝統的な建物が見られる。しかしその数は多いとは言えず、古い町並としては本格的に残存しているとは言い難い。一方その裏手に展開する豊かな湧水風景は、脇役ではあるがこの町の発展に欠かせない存在であり、それらを訪ねることでこの町の訪問に厚みが増してくる。
 



訪問日:2012.08.14 TOP 町並INDEX