水落の郷愁風景

福井県鯖江市<宿場町・門前町> 地図 
 
町並度 4 非俗化度 8 −神明社の門前町から北陸道の宿場町に発達−
 

訪問日:2018.08.11 TOP 町並INDEX
 

 






水落の町並 右下は現役の醤油商

 鯖江市域の北部、水落地区は越前平野を北流する日野川右岸の自然堤防上に街村的に中心集落が連なる。この街路は旧北陸道で、東側の国道や北陸本線の縦断する付近の地盤よりは一段高く、水害を受けにくい地形を選択したことがわかる。
 地区の北側に神明社があり、中世にその門前町として形成された集落である。朝倉氏が代官を置いてこの地を支配しており、社の祭礼時には神役を奉仕したりしていたが、そのもとで町民は個々に屋敷を持ち自治的に運営されていたという。15世紀に既に町場を形成していたといわれ、馬市も立っていた。
 神明社より北側の鳥羽野と呼ばれる一帯は荒蕪地であったが、第二代福井藩主松平忠直の時に整備され、それを機に水落は宿駅として発達した。朝倉氏の旧臣であった清水氏が代々本陣や伝馬問屋をつとめた。
 『越前国名蹟考』では、街道沿いの様子を「森ノ下とも云、往還茶店、餅を売立場なり」「駅、馬十疋」などと記している。
 古い町並は神明社より南側に約500mにわたって続く。伝統的な建物が連続した箇所は少ないものの、堂々たる母屋を持つ現役の醤油商、梁組みを現した真壁の妻部を街道に向けた旧家などが見られ、土蔵を従えたものも多く見られた。
 東海道などの宿場町の様子と比べると家々の建て方がゆったりしており、半農半宿の営みであったのだろうと思わせる風景であった。