吉江の郷愁風景

福井県鯖江市<陣屋町> 地図
 
町並度 5 非俗化度 7  −江戸前期の小藩・吉江藩の拠点−






吉江町の町並 厳かな長屋門などが見られる 
 

 
鯖江市吉江地区は市域の北端近く、九頭竜川支流の浅水川左岸の低平な地区に展開している。周囲の近年になって郊外地となった地区を経てたどり着くと、寺社の姿や複雑な街路形態などからにわかに異質な感触を抱く。
 ここは江戸前期には小藩・吉江藩の本拠地となっていた地である。正保2(1645)年に松平昌親が福井藩から2万5000石を与えられて成立した。当時福井藩4代藩主であった松平光通の弟でわずか6歳であり、吉江に入部したのは明暦元(1655)年になってからであった。
 周辺諸村の畑地が召し上げられ、そこに吉江館と呼ばれた陣屋が置かれた。侍屋敷、組屋敷も置かれ、町人町として新町・西町・牛屋町・本町・東町・柳町が成立、これらを吉江町と称した。本町から陣屋までの道を大回りさせ、そこに制札場が設けられた。家臣は足軽などを除いて113人を数えたという。
 延宝2(1674)年に光通が死去すると、昌親はその後を引継いで5代藩主となったため、吉江藩は29年余りの短命の藩となった。廃藩によって館や屋敷、寺院なども福井城下に移転してしまったが、町人町6ヶ町は福井藩から保護され、諸役免除などの特例措置を受けた。そのため、在郷商業町としての賑わいは続いた。
 陣屋が置かれた時代ははるか以前ではあるが、漆喰に塗りまわされた長屋門を持つ堂々たる邸宅、屋敷森のように母屋脇に木々を茂らせた家など、なかなかどうして佇まいには格式がある。町家系の建物は袖壁を持ちせがい造りの二階部、軒下の木製幕板など北陸地方らしい外観を示していた。
 歩いていると所々に藩政時代の町名と現在の町名を併記した案内板が見られ、地元では町の歴史を意識した色がうかがえた。










訪問日:2018.08.11 TOP 町並INDEX