貞光の郷愁風景

徳島県貞光町<商業町> 地図 <つるぎ町>
 
町並度 6 非俗化度 5  −重層うだつで著名な町−







貞光の旧一宇街道沿いの町並


 徳島県の内陸部、吉野川の南岸に貞光の町が開けている。ここは町の中心が吉野川とは直角方向に展開しているため、幹線国道に潰されることなく古い町が温存されている。ここから剣山方面に向う一宇街道という枝道は、かつて山間部と吉野川流域とを結ぶ重要な道であった。藩政期以降、吉野川流域では中流より下では藍の生産が盛んで、この付近がその西端であり、煙草や薪、竹材や蒟蒻(コンニャク)をはじめ山間部の商品の取引とともに盛んに流通が行われ、吉野川の水運を介して徳島城下や大坂方面とやりとりされていた。
 貞光は重要伝統的建造物保存地区ではないが、重層うだつのある町として割合知名度が高い。旧一宇街道を歩くと、漆喰に塗回された町家が目立ち、袖うだつを構えた姿が多く目に付く。そしてその約半数ほどは、瓦を二段に載せたここでしか見られない姿を見せていた。
 やや訪ねる者におもねるような色が感じは否めないものの、交わる路地を挟んで重層うだつが向き合っている姿は、富を競い合ってうだつを構え合った当時の活気を想起させるようだ。中には鏝絵で精緻な細工が施されたうだつもあった。
 多くが明治以降の建物と思われるが、うだつの存在もあってその重厚さは訪ねる者に見応え感を覚えさせる。吉野川流域では先に触れた藍・煙草の他に養蚕も盛んで、地場産業を根幹として豊かに自活していた様子が町並を通しても各町それぞれに窺える。
 





重層うだつのある町家が連続する 


 





 
訪問日:2007.03.25 TOP 町並INDEX