鷺浦の郷愁風景

島根県大社町<漁村・港町> 地図 <出雲市>
 町並度 7 非俗化度 7 −出雲大社の裏側に見られる漁村の原風景−
 






 
穏やかな湾奥に開ける鷺浦の風景 規則的な路地からは港が望める


 島根半島の北岸はその多くの箇所で山地が平地を作らずそのまま日本海に没している。
 この鷺浦は出雲大社の裏側といった位置にあり、神社と細い峠道ながら一本でつながっているといえる。訪れると大社周辺の賑わいとは打って変わった素朴な漁村風景が展開している。
 鷺浦の集落は海沿いに流れこむ川の河口付近に開ける微かな平地にへばりつくように発達している。家並はほぼ山陰地方らしい赤褐色の瓦で被われている。また街路形態も特徴的で、特に町並東部では一本のやや広い道の両側に奥行30mほどの路地が整然と櫛の歯状に分かれている。路地は山側では袋小路となり、海側も今では車の通る湾沿いの道であるが、かつては直接港となっていたのであろう。
 そして、この小集落に不似合いとも言える古いどっしりした旧家が多く残っているのも特筆に価しよう。漆喰に塗りこめられた町家風の建物が眼につき、二階部分には張瓦、一階は板塀、正面部には格子、時に軒をやや前に出して、漁具を収納する仕組となっているものも見かけた。
 中世から大社領十二郷七浦の一つに指定されており、江戸期に入ると西廻り航路の寄港地ともなった。町家風の建物が見られることにつながっているだろう。代表的な塩飽屋(屋号)住宅は、塩飽諸島の塩を扱う廻船問屋であった。他にも各民家には屋号が表札とともに掲げてある。但馬屋など地名を由来にしているもの、西浜屋、岩棚など地形に関するもの、姓名をそのまま用いたものなど様々で、それらを瞥見しているだけで興味深い散策となる。漁具などにも屋号で名前が記されていることから、地元では姓でなく屋号で呼ぶのが通常であるらしい。
 2002年に最初に訪問した時は外向きの色は全く感じられなかったが、その後旧家などを案内する表示板が所々に立てられて、また先に触れた塩飽屋はカフェなどとして利用されている。また宿泊施設として利用されている旧家もあるようだ。
 多くの人に町並の魅力を知っていただきたいと思う一方、貴重な漁村風景は外部の手を大きく加えることなく、いつまでも残っていてほしいと願って止まない。




もと廻船問屋・塩飽屋と付近の町並








         

※2026.05最終訪問時撮影    旧ページ

訪問日:2002.09.15
(2026.05.02最終訪問)
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