西条の郷愁風景

広島県東広島市<産業町・宿場町> 地図
 
町並度 5 非俗化度 4  −酒都と呼ばれる町 旧街道の面影も残る−




 酒蔵群で有名な西条の町並は旧山陽道沿いでもあり、旧態をよく継承し町家風の外観がよく保たれています。屋根は石見地方など山陰に共通する赤瓦です。







酒蔵街の横路地






街道西部、旧山陽道沿いの町並

旧賀茂郡役所
※この建物は現在取壊されています。


※画像は2002〜2004年にかけて撮影されたものが混在しています。
 


 西条の町並はJR西条駅の東側の旧山陽道沿道を中心に残り、酒どころらしい蔵造りや古い家並が多く残る。近年になって広島大学が市内に移動してきたこともあり、町のイメージは随分変わった。駅前地区は最近になって大学まで一直線に伸びる道路が整備され、近代的な学園都市へと変貌を遂げている。
 その一方で、酒都とも称される雰囲気は駅の周辺、歩いて15分ほどの範囲に濃厚に残り、町は道路整備にあたり極力その雰囲気を維持することに努め、毎年10月上旬には酒祭が開催され、その折には多くの酒蔵が開放され、それらを含む古い町並に身近に接せられる機会が保たれている。
 西条での酒造りは江戸初期に発祥し、その頃には三軒の酒家があったことが古文書に記されていること明らかになっている。最近の発掘調査でもそれが裏づけされ、西条の酒造りは400年以上にわたる深い歴史を有していることになる。
 また、西条は交通の上でも主要な位置を占め、山陽道の宿場(四日市宿)であった。今では四日市という地名は当地には馴染みがないが、1890(明治22)年までの「四日市次郎丸村」に由来しており、さらに中世末期に書かれた古文書に「さいじゃう よつかいち」と記されていることから、その頃に遡るものと思われる。参勤交代時にも多くの大名がここで休息、さらには宿泊をしていたものと考えられている。一角には藩直轄の宿(茶屋)が配置され、その遺構も残っている。西の海田宿、東の本郷宿からはそれぞれかなりの距離があり、しかも峠を有しているためこの宿駅は大いに栄えたことだろう。街道西側には旧賀茂郡役所の門も残る。宿場らしい雰囲気は残念ながら僅かしか感じ取れないが、この地域の中心地らしい面影は、余りあるものがある。
 町並は西条駅を中心に、主にその東側に酒造会社が多く存在し白壁土蔵の酒蔵が見られる。それらの多くでは主屋は町家風の構えを残し、古い町並らしさを演出するのにに寄与している。そしてその多くはこの地方独特の赤瓦を葺き、また妻入形式の屋根を持つものも目立ち、瀬戸内沿岸地域とは違いどことなく山陰地方を思わせる町並の雰囲気が漂っている。しかも屋根の四隅には名古屋城を想起させるような飾りが設えられている。それらの特徴は西条だけでなく賀茂地方(賀茂郡を中心とする広島県中部地方)一帯に広く見られる。
 酒祭り時には普段は静かな酒蔵街も訪問客でごった返す。そのイメージが一人歩きしてしまいはしないかと少し危惧の念を抱く。旧山陽道を包括する古い町家の佇まいも含め、残していっていただきたいと願いたい。

TOP 町並INDEX