最上稲荷門前の郷愁風景

岡山市北区<門前町> 地図 
 
町並度 5 非俗化度 5 −門前街としての純度は屈指のものがある−








最上稲荷門前街 伝統的な構えの店舗・旅館などが連なっている


 最上稲荷は正月には多くの初詣客があることで知られる。稲荷とあり大鳥居もあるが実際は寺院であり、その点は豊川稲荷と同様である。しかし厳密には神仏分離の影響を免れ神社の性格も残している。特殊な姿ともいえるだろう。1200年もの長きにわたって吉備路の一角から人々の営みを見守り、多くの信仰を集めてきた。
 稲荷そのものについては他に譲るとして、ここで紹介するのは門前街が独特であるからだ。
 参道口と大書された門をくぐると、土産物屋や食堂、旅館などが建て込んだ門前街が展開する。
 緩やかな坂道そしてカーブを描きながら連なる門前街は独特であり、その規模は金毘羅門前にも匹敵するものがある。むしろこちらの方がアーケード屋根に覆われ参道幅も狭いことから密集感があり、見応え感は濃いものがあるといえよう。
 名物とされる柚子せんべいを扱う店をはじめ、縁起物や民芸品を売る店などが並ぶ。食堂も多く複数あり、それらの構えは二階部に会食場を持つなど、大口団体にも対応したものであった。神具店といった店舗があることからも神仏混交の姿であることがわかる。
 訪ねた時はそれらの店を訪ねる客はわずかであったが、正月の初詣客を頂点にして大層賑わう時期もあるようで、そのためこの門前街が成立っているのだろう。参拝客の少ない時期では、かつての栄華を忍ぶような感触となり独特の探訪感がある。
 他の建物の混在がほぼ無い純粋な門前街が現代的な流行に迎合したような色もなく、それほど廃れた様子もなく現役であるのは今や貴重なもので、意識して残してもらいたいものである。






訪問日:2019.07.14 TOP 町並INDEX