雑賀崎の郷愁風景

和歌山市雑賀崎 <漁村> 地図
町並度 6 非俗化度 8 −紀伊水道に面する斜面上漁村集落−



 雑賀崎(さいかざき)は和歌山市街の南西部、紀伊水道に突出た半島の先端近くにある漁村で、近くには景勝地として知られる和歌浦がある。この付近は山塊が断崖となって海に没する地形であり、風光明媚なところだ。






集落内は細い階段状の路地が支配する。軒先が路地に覆い被さらんとばかりの狭い通路だ。海藻を干すにも右の写真のような工夫が見られる。




寺と町家建築の見られる一角もある。
 
 
 
この集落を訪ねるのは、現在では集落の頂上からアクセスするようになっている。道路も岬を回る崖上の道がメインとなっていて、バスの停留所から歩いて山側から入るような仕組になっている。海岸沿いに主要道を作る余地はない地形である。
 
 岬付近の荒磯は古くからの漁場で、江戸時代には和歌山城下から釣り客で賑ったという記録もある純粋な漁村であった。
 集落はほとんどの箇所で傾斜地となり、アメーバ状の路地が平面的、さらに半立体的に各戸を巡る。都市近郊地域とは思えない典型的な斜面上漁村集落であった。海岸部はそれでも若干埋立てられ、近代的な漁港を囲むわずかな人工的平地が存在するが、一歩集落内に入ると坂道の路地が支配し、上部になるに従いその角度も急になり、多くが階段となる。
 極楽寺という山裾にやや広い敷地を持つ寺院付近は、入母屋の立派な屋根と虫籠窓が印象的な町家建築があったりして、集落内ではやや異質の空間だ。しかしその前面は漸く人がすれ違えるほどの幅しかない路地で、商業で栄えた古い町並で見られる風貌の大柄な町家がこんな狭い空隙に埋まっているのは、極めて滑稽な印象を抱かせる風景である。
 派生する一際狭い路地に入り込むと、そこは玄関先の袋小路だったり、庭先に紛れ込んだりする。公私の境が非常に曖昧で、近代的な住宅団地とはまさに対蹠的な集落であった。

 


訪問日:2006.04.30 TOP 町並INDEX