佐井の郷愁風景

青森県佐井村<港町・漁村> 地図 
 町並度 5 非俗化度 7  −西廻り航路の寄港地ともなった下北半島北西部の港町−








佐井(古佐井)の町並


 佐井村は本州最北端の大間崎から南へ10kmほどのところに中心集落が開ける。狭いとはいえ下北半島の北西岸、いわゆる「刃」の部分では唯一といえる平地の展開がある。景勝地・仏ヶ浦への観光船も発着しており、観光業も産業の柱の一つとなっている。
 田名部通という盛岡藩の下部組織の中で、主要な港のひとつに数えられていた。特に江戸後期になって発達した西廻り航路の寄港で大いに賑わい、廻船業が発達した。日本海側からすると半島で最も寄港し易い位置にあること、また半島の中では河川に恵まれ水利が良かったことも理由として挙げられる。文化9(1812)年から文政12(1829)年に記録された佐井湊の記録には、酒田や加賀など各地の商人の名が見え、交易範囲は松前から山陰にかけての日本海岸をはじめ、瀬戸内・東海道にも及んでいたとされる。
 積出されるのは檜材などの木材と海産物、上り荷は米が主体であった。
 また地理的位置から蝦夷地の警備も司った。享和3(1803)年に佐井は幕府より箱館への渡航地に指定され、盛岡・弘前両藩の要人に主に使われた。幕府役人の一行の通過もあり、そのため港には大砲3門が設置された。
 二本の川が津軽海峡に注いでおり、市街地はその付近に展開している。主に東部の古佐井と呼ばれる地区に伝統的な町並の姿があった。廻船業で栄えた地らしく町家・商家を思わせる家々も眼につき、二階部に精緻な意匠の見られるものもある。平入り妻入りが混在しているがやや後者の方が多いか。木質感の高さも独特の町並の雰囲気を強めている。
 外来者は遊覧船に乗って終りか、通過するかであろうから古い町を歩く機会はないだろうが、少し立寄ってみる価値のある町並である。





訪問日:2018.04.30 TOP 町並INDEX