坂出の郷愁風景

香川県坂出市<港町> 地図
町並度 4 非俗化度 8 −四国の玄関口となった町−


 坂出市は香川県の主要な町の一つであるものの、町の規模としては地方都市のたたずまいであるが、瀬戸大橋開通後は大動脈の受け口として交通面、また各種商工業も集積し重要な位置を占めている。
八幡町三丁目の町並




白金町二丁目の町並 寿町二丁目の町並




本町一丁目の町並 アーケードの中にも町家建築が散在している 本町二丁目の町並


本町二丁目の町並
 
 
 讃岐の国衙はここに置かれていたということで、大変古い歴史を有する町でもある。
 江戸時代に入り港湾の建設が本格的に行われ、文政12(1829)年に大規模な塩田が開墾されたことによって港町としての存在感が増した。坂出塩田は藩内でも最大規模のもので、その生産が軌道に乗ると塩の積出しを中心に出帆する船も急増し、港町として確立した。開墾地には町場が発達し現在の市街地の基礎が形作られている。一方でそのような地に市街地が形成されたため生活水、飲料水には困り、かつての陸地より塩田際まで竹の樋を埋設し、真水を引く苦心の工事も行われた。
 予讃本線の坂出駅の北口が塩田に由来する市街地で、本町から西に寿町、白金町、八幡町にかけて連なる東西の通りが最も栄えていた界隈である。東部ではアーケードに覆われた本格的な商店街となっている。しかしその中にあっても重厚な町家建築が黒漆喰を纏って、数棟か根強く残っているのは港を基盤とした商業が盛んであったことを示しているようだ。
 中心地区はそのような状況で古い町並としては残念な状況ではあるものの、アーケードが取れる西半分では比較的自然な感じで町並が残っており、生活感のある街道集落といった家並が連なっている。本瓦を葺いた伝統的な建物も幾つか挟まっていた。
 また本町二丁目付近では面的な古い町並の広がりがあり、部分的にアーケードが残る滑稽な商店街をはじめ、塩田や廻船業で栄えたらしい敷地の広い邸宅が厳かな門を構えていたりして、迷いながら歩くのもなかなか面白い界隈であった。
 古い町並として保存するほどの質量ではないにせよ、着眼点によっては興味深い町歩きとなる。ただそれだけに今後保存活動などは期待できそうに無く、徐々にその色を淡くすることだろう。
 

 


訪問日:2010.07.19 TOP 町並INDEX