坂手島の郷愁風景

三重県鳥羽市【漁村】 地図 
 町並度 5 非俗化度 10 −鳥羽城の前衛の島−

   

 坂手島は鳥羽市街地からすぐのところにあり、東側に菅島、南には大型ホテルの多く立地する小半島を望み、離島という感覚は覚えにくい。
 但し、島の南側に展開する集落は密集度が高く、また一部は斜面上にも展開しており、典型的な島の漁村集落の雰囲気をかもし出していた。
 古くは万葉集にも登場するほどの深い歴史を持つ島で、その頃には鳥羽から移住した住民により定住者があったという。
 江戸期には城の前の海を固め、また防波堤の役割をして港を守る位置にあったため、砲台が置かれ鳥羽城守護の要所として重視された。
 鳥羽からの船着場より東側に細長く展開する平地と、周囲より幾ばくか勾配が緩い斜面に集落が展開する。前者には商家を思わせるやや立派な建物も散見され、一部には商店が集まる場所もあった。板貼りの外装を持つ建物が多いのは潮風対策だろうか。 
 鳥羽沖の島ではこの他に答志島を訪ねたが、歩いていて頻繁に島民の姿を見、その姿からも活気が感じられたのとは対蹠的に静かで、空家となっている家も少なくないようだ。最近では漁業よりも本土に通うサラリーマン家庭が増えているといい、そうなると町の中心から眼と鼻の先とはいえ、この島に住み続ける必要性が薄くなってくるのだろう。
 漁村集落らしい風景は随所に残っており、訪ねる価値のある島ではあるが、やや寂しさを感じる訪問となった。



 









訪問日:2016.06.04 TOP 町並INDEX