佐川の郷愁風景

高知県佐川町【産業町】 地図
 
町並度 6 非俗化度 4 −造り酒屋が形成する町並−
 
 

 

 司牡丹関連の建物自らが形成する佐川の町並


 佐川町は高知市の西20km余りの地に展開し、仁淀川の支流域にあり丘陵に囲まれた盆地状の地形となっている。
 近世には佐川領1万石の知る所となり、一国一城令により取壊された佐川城の麓に家中町や町人町を構えていた。
 以後、近隣の諸地域の中では比較的地味な発展を続けていた。高知から伊予に通じる往還の脇道や、そこから須崎や高岡(現土佐市)に通じる往来はあったがそれらを通じて商業の中心として賑わいを増したということはなかったようだ。
 明治に入るとこの町も活況を帯びてくる。近代産業として全国的に盛んになった製糸業がここに拠点を構え、佐川製糸会社として多数の女工などを擁していた。そしてもうひとつ、酒造業も急速な発展を見た。
 この町を歩いてもっとも印象的な古い佇まいは、「司牡丹酒造」の酒蔵群である。藩政時代からここには酒醸造者が幾つかあったが、大正7年、それらが結集して佐川醸造株式会社が設立された。駅前の東西に伸びる通りから一本山手の街路には司牡丹関連の建物が集結し、それらの多くが昔ながらの漆喰の外観を保つ土蔵建築であるため、古い町並として見応えのある風景を自らが形成している。
全国的にも知名度の高いこの司牡丹は、なるほど歩いてみるとそれだけのものがあると感じる。そしてこれだけの規模で、近代的な建屋に更新することもなく使い続けて居られることは酒造家としての誇りでもあるのだろう。
 今回は10数年ぶりの再訪で、前回は外来客に対応する店舗などはわずかであったが、売店や公開される建物も見られ、探索客もあちこち見られるなどささやかながら観光地的な色合いを帯びて来ているようだ。しかし伝統的な建物群をそのまま活かし、観光客に迎合するような店舗があるわけではないため好感が持てる。
 また一角には下見板張りの外観を持つ洋風建築・青山文庫もあり、小さな町ながら見所の凝縮されたところでもある。
 

 

 

 

 

 
洋風の外観を見せる旧青山文庫の建物

2022.09再訪問時撮影     旧ページ


訪問日:2009.05.05
2022.09.24再訪問
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