坂越の郷愁風景

兵庫県赤穂市<港町> 地図
 町並度 7 非俗化度 4 −千種川運の終点 物資の積出港だった−
 
   
坂越は赤穂市の東部に位置する。この付近で播磨西部を流れ下ってきた千種川は海に注ぐかに見えるが、低い丘陵に遮られて西流し、赤穂の市街地を経て播磨灘に河口を開いている。海と川が近接するこの付近で川運による物資が一旦陸揚げされ、低い峠を越えて坂越の港より大坂をはじめ各地に運ばれていった。
坂越港近くの町並




港から千種川をつなぐ道筋に濃厚な古い町並が見られる 二階部分の出格子と虫籠窓の組合せは播磨地方西部の特徴である


 坂越大路と呼ばれるこの海と川を結ぶ道は、現在でも生活道として使われ、乗用車のすれ違いも出来るほどの幅もあることから重要な道であったことがわかる。石畳調に整えられているのはすこしやり過ぎの感もあるが、かつて物資が頻々と行き交った道筋を案内してくれる。南端は海にぶつかり、北端は国道250号線の走る堤防により行止りとなっている。この付近はかつて高瀬船の荷揚げ場であった。
 一方坂越浦と呼ばれた港は背後の山々と眼前の生島によって風波が遮られ、緒船の停泊に適した良港であった。波浪時には各地の商船が150隻ほどここに繋留された記録もあるという。また廻船業も中世より盛んで、江戸時代になると大型の廻船30隻以上を保有し、赤穂の名産であった塩はここより江戸城に献上された。
 千種川に近い辺りから緩やかな峠を越えて坂越港に向う一本道には、ほぼ全体にわたって古い町並が見られるが、とりわけ港近くに間口の広い堂々とした町家建築が集中している。港に近い位置に立地した商家ほど、財力もあり広い敷地を有していて、建物もしっかりしていた分残存率が高かったようだ。江戸期にまで遡ると思われる、二階の立ち上がりの低いつし二階の町家は、現在でも酒屋など商売を営んでいる姿も多く、格子や虫籠窓などの意匠も原型に近い状態で残されている。
 再訪問したのは冬の夕方であったが、この町並はメディアで紹介されることも少なくないため町並探訪をしている人々の姿も見られた。舗装を外向きにあしらって改装してしまったのは少々いただけないが、観光地風の出で立ちではないのが好印象であった。
 




奥藤酒造付近 白壁の酒蔵が印象的だ 小さな峠を越えた千種川に近い辺りにも所々に伝統的な建物が残っている
坂越大路の裏路地 造り酒屋の裏手より 

大避神社の境内には坂越の船祭り(毎年10月実施)に使われる船や絵馬が多数見られる


※「」印を付した画像は2001年4月、その他は2007年2月撮影

訪問日:2001.04.30
(2007.02.11再取材)
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