佐久間の郷愁風景

静岡県佐久間町<商業町> 地図  <浜松市天竜区>
町並度 5 非俗化度 8 −天竜川水運により流通の拠点として発達した−





佐久間(中部)の町並






 県の北西部、天竜川沿いの狭い盆地に展開する佐久間の町。中心部は川を挟みもと中部村と半場村で、後者に飯田線の中部天竜駅がある。
 陸路の険しい地域で、物の往き来は天竜川に依る部分が大きかった。中部は支流が合流するところでもあったので、河川交通上も重要な場所となった。上流側は信州に通じていることから、特に信州との物資の往来が多かった。平地が少なく耕地に乏しかったため、多くの穀類が川を下ってきたという。また筏を組んで材木類の移送も盛んにおこなわれ、榑木と呼ばれる材木の束が盛んに川を下って行った。
 陸路は三河と信濃を結ぶ街道が通じ、塩の輸送などが行われていた。中部ではこれらを受け、町場が発達して宿屋などもあったという。
 街路は天竜川の流路に沿い円弧状となっており、町並もそれに従いカーブしている。特徴的な展開だ。その1km弱の街路沿いに比較的密度濃く家並が連なる。今でこそ店舗は少ないが、かつては商店が軒を接して連なっていたことは1階部が開放的な構造になっている建物が多いことでわかる。伝統的な建物の比率は必ずしも高くはないが、古い町並として歩き甲斐がある。また山側の裏手には煉瓦や石造など様々な土蔵が見られ、それらを巡るのも面白い。




 

 
街路裏手にはさまざまな土蔵が見られる 
 

 上流数キロの所には佐久間ダムがある。近代技術を結集し昭和31年に完成したこのダムは当時画期的な土木構造物としても注目され、医療・教育の拠点が置かれ、また観光地ともなりダム景気が訪れたという。昼食に寄った小さな食堂で年配の婦人がその頃の賑わいの様子と、付近の家々はやはり全て店舗だったといわれていた。
 そう言えば町中には旅館の看板が多く見られた。全て営業されているかどうかはわからないがダム建設やその後の景気に沸いたことを証明しているようであった。
 


 


 
 旅館が多いのも特徴だ  

訪問日:2019.11.04 TOP 町並INDEX