佐倉の郷愁風景

千葉県佐倉市【城下町】 地図
 
町並度 3 非俗化度 6 −台地の上に展開する旧城下町−
 






台地上の一番高い所 宮小路には旧武家屋敷が三棟保存されている。


 

 佐倉市は東京都内への通勤圏に入っており、市域には多くの住宅団地が造成されている。しかしJR佐倉駅前付近は静かなたたずまいで、巨大都市圏の一部であることは感じられない。
 駅から北を見渡すと、緑深い丘陵が望まれる。古い佐倉の町はこの台地の上に開けている。それはここが江戸城の防備の為の要害が築かれたところで、周囲を見渡せる小高い地を拠点とし、北には印旛沼を従え敵にとっても攻めにくい地形であった。
 藩主の土井氏によって計画されたこの城下町。駅の方向から向うと急坂となっており、城を築くに適した所と思わせる。そしてその坂を登りきったあたりが周囲よりまた一段と高くなっていて、武家を配置した。現在でもここは奇跡的に往時の町割が良く残り、生垣が巡る風情ある通りがあった。下総の低地を睥睨し反乱軍を監視するにふさわしい当時の都市計画である。
 この宮小路と呼ばれる一角には数棟の武家屋敷が復元保存され、茅葺の簡素ないでたちを通りからも伺うことができる。
 この北側が町人地で、ゆるやかに起伏する台地上の平地に位置する。新しい建物の中に、所々切妻平入り、出桁の町家が見られる。いずれも厚い屋根を持ち、頭でっかちの印象を与える関東地方らしい外観を示していた。但し、町並として連続した風景はなく、散在の域を出ない。訪問客を案内する標識などは佐倉城址と旧武家屋敷街のみに限られていて、町の中心部からはここが城下町に由来する古い町であることは、知らなければ感じることもないだろう。もう少し早く地元が町家の貴重さを認識されていれば古い町並としての保存手段もあっただろうが、ここまで古い建物が少なくなってしまった現状では、町並保存という意識も芽生えないのかもしれない。






 

武家屋敷街の北側の本町には町家も所々に残っている。


訪問日:2006.11.04 TOP 町並INDEX