佐那具の郷愁風景

三重県上野市【宿場町】 地図
<伊賀市>
 町並度 5 非俗化度 9  −江戸初期より発達した大和街道の宿駅−





町家・商家風の伝統的建物が残る佐那具の町並
 

 城下町上野の市街地から北東に5kmほど、柘植川左岸に佐那具の町並が開ける。地形的には上野盆地の縁端に位置する。
 大和と伊勢を結ぶ街道沿いに宿駅が設けられ、町場が発達した。江戸初期の寛永期、藩主の休憩所として佐那具公亭が建てられ、その頃に町も整備されてたといわれる。下町・中町・上町と呼ばれる町並が続いていた。寛延年間頃の記録では650名弱の人口を有していた。
 『三国地志』には、「佐那具駅、按 古市片町ト云、河水ノ患アルヲ以ッテ今ノ地二移ス」とあり、柘植川の氾濫により水害対策として川から少し離れた今の街道沿いに移設したか。
 国道25号と柘植川とに挟まれた旧街道を歩くと現在でもひと目で街道集落とわかる家並が展開している。切妻平入で奥行深い家々は、間口によって税額が決められていた時代そのままである。商店だった家が多いようで一階部分が開放的な造りとなっている家々が目立つが、端正な出格子が綺麗に残されている旧家もあった。一部には茅葺屋根だったと思われるトタンで被覆された屋根の家も見られた。
 伊勢神宮への参詣路としても大いににぎわったのだろうが、明治30年に現在の関西本線である関西鉄道が開通、対岸に佐那具駅が設置されて以後は街道としての役割は漸減し、国道の開通で決定的なものになったのだろう。町の中心付近から柘植川を渡る橋があり、古い立派な親柱が残されていた。駅が出来た頃は新町と称される新たな町並ができたという。




現役の畳店  柘植川に架かる佐那具橋より街道方向を望む






訪問日:2023.06.03 TOP 町並INDEX