三見の郷愁風景

山口県萩市<宿場町> 地図 
 町並度 4 非俗化度 8  −赤間関街道の小さな宿場町−
  


 萩市域の西、三見地区は日本海に面する旧三見浦と、旧街道沿いの旧三見村の二つに大きく分けられ、両者は約3km離れている。町並の性格が大きく異なるため、ここでは宿場町として発展した旧三見村の風景を紹介する。










 山陰本線の駅は海岸部に設置されており、集落中心部はその周辺のみと思いがちであるが、国道に近い内陸部のこの地区にも意外な古い町並が残されている。ここは萩城下と下関を結ぶ赤間関街道が通り宿駅の指定を受けたところであり、古い歴史を持つところだ。 
 古くは方免村と呼ばれ、赤間関街道の発達で宿駅の指定とともに三見市と呼ばれるようになったという。この地方の宿場町は市の名を冠して呼ばれることが少なくなく、ここも三見市と称されていた。それらはやはり商業の集積を見たことを示していて、宿駅集落がそのまま在郷商業町や市場町として機能している例が多かったようだ。
 往時の記録では50弱の家屋、そのうち30余りが宿持ちで、商いをする者も17軒あった。奥行の深い町家形式の町割で、街道に近い部分を店舗や居住に使い、奥に土蔵や馬小屋などを配していたという。宿場町の経営を司る目代が置かれ、藩の保護のもと火災や風水害時の米銀の貸付も行われていた。
 山々に囲まれた片田舎といった風情でしかないのに、当時を思わせる伝統的な建物も残っており、意外性を感じさせる風景である。東西300mほどの一本道の両側に展開する小さな集落であり、それが後の道路建設による影響もなく全く手付かずで旧街道が保持されている。
 海岸部の漁村とはその歴史同様、町並景観も全く様相の異なるものであった。

訪問日:2013.03.24 TOP 町並INDEX