三戸泉山の郷愁風景

青森県三戸町【農漁村集落】 地図
 
町並度 5 非俗化度 10 −鐘楼のある建物が集落のシンボル−




 三戸町泉山地区は町の中心部から2kmほど東、馬淵川右岸に展開する集落だ。周囲は比較的平地に恵まれ耕作地帯となっている。
 この泉山集落の特徴は屋根の形が統一されているという点である。トタン葺であるのは東北地方北部全体に共通するものだが、それが非常に高い立上がりで、しかも寄棟の形をとっている。これはもと茅葺であったものも多いに違いない。各家が裕福であったことの証でもあり、それぞれが庭や土蔵・納屋などを従えた広い敷地を持つことで、棟々が適度な間隔を持ち独特の集落風景が展開している。
 明治初年の『新撰陸奥国誌』では「家数四十四軒(中略)平地に住す。土地中之中なれとも田絶少し、畑煙草を種ふ」とある。またこの集落の特筆すべきこととして漁業があり、「留」と称される簗を設置する漁法で、馬淵川での鮭・鱒をはじめ鮎・鯰などが漁獲されていた。殊に初鮭は藩主に献上され珍重されていたという。
 農産物は米・麦・その他雑穀と蔬菜などであった。
 現在集落内を歩くと農村集落という印象は抱くが漁村の雰囲気を感じることはできない。藩への献上が義務付けられていた頃の生業であり、現在は純粋な農村集落となっているのだろうか。景観の上で中心をなしていたのが消防屯所の鐘楼だった。集落の何処からでも眼にするもので、建物には「青年会館」との文字も見えた。
 小さな集落ながら、その景観も歴史も個性的で印象的であった。
 


泉山集落の中心にある消防屯所の鐘楼








訪問日:2018.04.29 TOP 町並INDEX