佐々羅の郷愁風景

奈良県吉野町【街道集落】 地図
 
町並度 5 非俗化度 9  −旧街道の追分に人知れず残る旧家群−





 奈良県吉野地方を巡る街道は奥吉野の山峡から大和盆地に通じる道とともに、伊勢へ向う街道も無数にある。これらは地元ではほとんど伊勢街道や参宮街道と呼ばれているものであり、伊勢参りの道であった。ここで紹介する佐々羅は、五條そして和歌山方面と伊勢とを結ぶ街道と、この街道から分岐して大宇陀・榛原方面に向う道の分岐点に位置していたところだ。
佐々羅の町並








 


 古くは龍門郷と呼ばれ、地名の由来は周囲が皿のような盆地であることに由来しているという。江戸期は大半の時期が幕府領であった。街道の交点に発達した集落らしいが、今一つ詳しい資料が無い。しかし、所々には重伝建地区で見られるほどの格式を感じる商家の建物が残っている。1階には格子が美しく残り、2階には袖壁・虫籠窓が見られ、厳かな門を構え広い敷地を持つ邸宅も一部に残る。
 この中で特筆されるのが「龍門文庫」という表示のある旧家だ。当主であった坂本氏は、生前写経をはじめとした様々な部門にわたり書籍を収集し、その点数1千にも及んだ。識者からも日本文化研究の貴重な資料と認められ、戦後になってから夫人の手により整理され、文書館を創設したとのことである。現在も座敷や書庫が公開されており、定期的に催しも開催されているようであった。
 軒を接した町家が連続するのではなく、質の高い旧家が農村集落的に散在している。地元の方以外決して通ることの無い旧街道に、静かにたたずむ町並だ。


訪問日:2008.07.20 TOP 町並INDEX