関宿の郷愁風景

三重県関町<宿場町> 地図 <亀山市>
 町並度 9 非俗化度 3  −現存する東海道を代表する町並−




 関宿は旧東海道の中では、最も当時の姿を今に留めている宿場である。
 ここは東海道の旧宿場町で唯一、重要伝統的建造物群保存地区に指定され、林立する電柱などは全て撤去され、近代的な物は町並から極力排除されている。
 宿場街は東西約2kmも続く長いもので、幹線街道の宿駅の規模の大きさが感じられる。




中町の町並(左上★)


 この宿場は伊勢と近江の国境近くにあり、鈴鹿峠を控える地にあることからも重要な位置付けをされ、戦略上も要地であり、名の通り近くには鈴鹿の関があり旅人は厳しい改めを受けた。
 16世紀後半には既に東海道に沿う町場として整備されていたといわれ、徳川家康により宿駅制度が確立されると、参勤交代や旅人の増加、そして盛んになった伊勢参りによって大層な賑わいを見せたという。
 国道1号線はこの旧東海道を避け、南にバイパスとして建設されたため旧宿駅内はほとんど往時そのままの雰囲気が残っている。新しい建物は探すのが難しいほどであり、平入りでほぼ統一されながら屋根の立上り高がまちまちで一見雑然とした印象も感じさせる。しかし古い道らしくゆるやかに曲線を連ねながら、そして街路に対してわずかに角度を持って建てられた家並は古い町並景観として抜群の見応えを持って訪ねるものを迎えてくれる。
 細部の特徴としては二階両妻部に袖壁を構え、軒下には幕板(幕掛け・板暖簾)が多くの町家で見られる。この幕板は関を含む伊勢地方でもっとも設置率が高かったようだ。漆喰の塗屋造りで虫籠窓が設けられているものもあるが、出格子となっている例が多く、また出桁調の造りも見られることなどからも、ここが畿内をはじめ東海、さらには北陸など各地の建築文化の影響を受けていることがわかる。
 旧旅籠の一部は公開されていて見学も出来る。重伝建地区となって観光客も多く訪ねる町並となっているが、団体客の訪れもそれほど頻繁ではなく比較的落着いての町並探索が可能で、町並の現存度の割には観光地化の度合は低く、古い町並として好ましい状態だ。
 町並は三つに大きく分かれ、その中心は中町である。間口の広い町家建築が目立ち、名物関の戸をはじめ伝統的な土産を売る店などはここに集中している。江戸方に続く木崎地区は素朴な小規模町家が細やかに連なり、その軒を連ねる風景が魅力的である。また京方の新所地区は宿屋の不足により徐々に宿場街が広がっていった地区であり、緩やかな坂に沿ってやや開放的な町並風景となる。三者三様に魅力のある町歩きとなる。距離は長いがぜひ通して歩いてみていただきたいものだ。








新所の町並(右2枚★)




木崎の町並

訪問日:2001.12.24
(10.10.11最終取材)
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※2010年10月撮影(★印:2006年10月撮影)