岡村の郷愁風景

愛媛県関前村 <漁村・農村集落> 地図 <今治市>
 
町並度 4 非俗化度 8 −本州と陸続きになった半農半漁の島−

岡村の町並
 

 岡村島は瀬戸内の多島海の只中にあり、西に大崎下島、東に小大下島が隣接している。愛媛県に属してはいるが大崎下島が近年本州と橋で陸続きとなったこともあり、広島県との結びつきが強くなっている。呉市街地から1時間余りで到着することが出来る。
 
 この島は歴史的には重要な港町であった時代が長い。特に栄えたのが大崎上島の御手洗と対峙していた白潟地区で、松山藩の保護により港町が発達し、一時は飲食店をはじめ貸座敷、酒屋など70軒もの集落であった。明治以降は藩の保護が絶たれ、また波の影響を受け易い地形でもあったため急速に廃れ、以後は島の南東側にある現在の岡村地区が中心地となっている。
 岡村港は漁港として18世紀には開かれており、明治から大正の頃には漁家150戸を数える典型的な漁村であった。近隣は豊かな漁場であり鯛や鰆などを水揚し山陽から阪神方面を主な取引先としていた。
 現在は蜜柑栽培も基幹産業の一つで、平地の乏しい島の斜面は多くの部分で蜜柑畑に開発されている。岡村集落内を歩くと漁村というより農村の雰囲気が支配している。島の農村というのは瀬戸内地域独特のものであろう。大崎下島の大長、倉橋島の尾立などと通じる雰囲気を感じる。
 板壁に被われた入母屋の建物は農家らしい構造で、或るものは土蔵を従え他のものは漆喰に塗り込められた外観の倉庫を持っている。商家風の町家建築も海岸近くの一部に残っていたが、多くの場所では島の集落らしい狭い路地が支配していた。
 本州と陸続きにはなってもマイカーでの客は精々対岸の重伝建地区・御手洗集落を訪ねる程度で、ここまで流れてくる車は少ないようであった。静かで素朴な島の集落の風情が保たれている。
 









訪問日:2009.03.11 TOP 町並INDEX