湯田(川内高城温泉)の郷愁風景

鹿児島県川内市【温泉町】  地図 <薩摩川内市>
 
町並度 6 非俗化度 5 -山間の谷あいに密かに展開する温泉街-

 
   
共同湯付近を中心に濃厚な温泉街の町並が展開している 


 
 

 川内の市街地からは10km北の山あい、湯田川という川沿いの小さな谷間に川内高城温泉郷がある。古くは湯之元温泉と呼ばれていた。
 中世には発見されたという記録のある温泉場であり、鎌倉期の『薩摩国建久図田帳』に早くもその名を見ることができる。『三国名所図会』によると「温泉二か所あり、其間相距ること二町余にて、二か所共に湯灰汁気に硫黄気を兼ね、疝癪及び筋骨の拘攣、湿気、上気等の諸痾を愈す・・」と記される。江戸後期には既に温泉街が形成され、西郷隆盛もよく訪れていたといわれており、地内には狩りの途中に宿泊したとされる建物や、腰掛石などが言い伝えられている。
 温泉街は狭い谷沿いに開け、大型団体客を受け入れる施設はなく、小規模な旅館が昔ながらの佇まいのまま立地しており、古い町並を形成している。特に共同浴場付近は風情豊かであり、鄙びた温泉町というにふさわしい風景が展開していた。
 
 
 
 
 


 
   


 


 
   


 ホテル型の宿はごく一部で、中小規模の旅館が谷筋に沿い建ち並んでいる。内湯に日帰り客を受け入れている旅館も多く、宿泊は素泊まりのみとなっていて湯治宿のようなところも複数ある。それらには冷蔵庫や炊事施設が備えられており、自炊しながらの長逗留も可能である。小さな集落ながら食料品店や酒屋もあり自炊するにも不自由しない。私もそのような所に宿を取ったが、都市部のカプセルホテル並以下の廉価であった。設備は古いものの、昭和感が溢れる宿で、しかも良質の温泉に自由に入れるというのは贅沢に値しよう。
 このような形の温泉街は全国的にもますます貴重なものになっていくだろう。廃れずかつ原形を崩さずというのはなかなかバランスを保つのが難しいものであるが、可能な限りずっとこのままであってほしいものである。
 




 
夜の風景(共同湯・宿からの眺め) 


訪問日:2020.01.03・04 TOP 町並INDEX