下部の郷愁風景

山梨県下部町【温泉町・山村集落】 地図(下部) 地図(湯ノ奥)
 
町並度 4 非俗化度 3 −信玄伝説のある温泉地−
 




 下部温泉は名高い温泉地ではあるが狭い谷間に沿いホテルや旅館が所狭しと建ちならび、その展開は嵐気をはらんだような奥ゆかしさを感じる。近年は
 信玄の隠し湯というフレーズがこの温泉場の代名詞だが、それほどに歴史が深く中世より湯治客・自炊客で賑っていた。近くに身延山久遠寺もあったことから参拝客らの訪れも多く、そのことも温泉地としての発展を促したのだろう。鉄道が開通すると客の訪れはさらに増した。
 表通りは屹立するホテル建築でありいささか風情には乏しい。しかしそれらも新築は少なく、適度な古び方を呈しているため、昭和の温泉場という雰囲気も漂う。
 この温泉街から川沿いに遡ると湯之奥集落に至る。ここは戦国時代に武田氏により金山が開かれていたことで知られている。石畳に被われた急坂に沿い展開する独特の集落風景で、その突当りには重分門西家が厳かな茅葺の屋根を従え鎮座している。金山衆の取締りをおこなっていた代官職に就いていた由緒ある家である。またここから南東に峠を越え駿河に達する街道も達しており、金山の経営時期には重要な街路であったため、口留番所も置かれていた。
 現在は全くの山村集落で、南向きの斜面に展開する穏やかなたたずまいであった。

渓流沿いに展開する下部温泉






湯之奥の門西家(右)




湯之奥の町並


訪問日:2009.01.02 TOP 町並INDEX