下京界隈の郷愁風景(1)

−五条通より北側−

京都市下京区<商業町> 地図 (1枚目の写真付近を示す)
町並度 5 非俗化度 4 −縦横に巡る通りに沿い面的に残る古い町並−






佛光寺通東中筋東入木賊山町の町並 黒門通松原上ル杉蛭子町の町並




東中筋通松原上ル舟屋町の町並 万寿寺通油小路東入上金仏町の町並
 

 京都の旧市街地は戦災の影響がなく、また住民の伝統意識や条例に守られていることもあって、一部を除いてほぼ全域に古い町並が分布していると言って良い。縦横に小路が交錯する町中を辿ると、思わぬところで古い町並が出現する。
 ここで紹介する下京区の界隈も例外ではなく、むしろ四条通を中心とした界隈より京都駅に近いこの地区の方が本来の京都らしい町並が多く残っている。商業の中心からはやや南に外れているからだろう。余りに範囲が広いので、五条通を境に南北半々づつ紹介する。ここでは北半分、通り歌で、「四綾佛高松万五条」と歌われるあたりである。
 この地区を散策するのはとにかく迷いながら歩く他ない。どこに集中して町並が残るかと問われても場所を特定しがたく、東西南北の通りを一本一本検証しようとすると厖大な時間がかかるからだ。ふと入りこんだ小路に思いがけぬ商家建築を発見したり、長屋風の町家を見付けまた老舗のたたずまいを見るのが、この地区の町歩きの楽しさである。辻の至る所には昔ながらの琺瑯製の地名表示板があるので、簡単な地図を持っていれば方向感覚を失うことはない。
 特筆すべき通りの一つに東中筋通がある。これは北は佛光寺通から南に七条通の南側まで残っており、中南部では一般的な舗装道であるが、北端付近は年季の入った石畳の路地となり、車の進入はできない。規則的に縦横の通りが直交する京都の市街地でも、稀にこのような枝道があり、図子
(ズシ)や突抜と呼ばれる。この東中筋通も石畳の区間では天使突抜とも称されている。この名称は当時、天使社という愛称で親しまれていた五条天神社を貫いていたため付けられたといわれる。小規模な町家が純度高く連なり、自転車などが通りに直接置かれている風景は生活色溢れるもので、都心近くに居ることを忘れさせてくれる佇まいであった。
  




石畳の路地が展開する東中筋通(天使突抜)の町並

訪問日:2009.02.01 TOP 町並INDEX