下市の郷愁風景

奈良県下市町<商業町> 地図
 
町並度 5 非俗化度 9 −吉野の商都−



下市町は奈良県の中央部、吉野の入口とも言える位置にある町で、古くから人々や物資の往来が盛んで、町場が栄えてきた。「山家なれど下市は都、大坂商人の津でござる」とも謳われた地で、吉野郡の商都として殷賑をきわめていた。 

下市の町並





国道沿いにも商家風の建物が残る




「問屋橋」の前後には町家がある程度固まって残っていた。

 
 名が示すように町の興りは市場町で、18世紀後半の記録では月に六度も市立てがあり、大坂や堺・和歌山などからも商人が掛け付け、取引が行われていたのだという。背後にある吉野山地は杉・檜の良材が得られ、箸などの加工品は名産品として知られ、農産物の他和紙や漆、薬草など多くの商品価値の高い特産物があった。和紙は京都にも上納されていたという。
 現在は山間の小さな町という印象でしかないが、町は吉野川北岸の大淀町と対峙し、支流の秋野川に沿い細長く連なっている。町役場のある辺りまでは約3kmもあり、古くから大きな町場を形成していたことが感じられる。
 秋野川の東岸を国道309号線が走り、商店が連なっている。一部には間口の広い平入りの商家風の建物が幾棟か残り、残照を伝える。但し古い町並といえるものは、それよりはずれた脇道の一部のみであり、連続度も今ひとつである。しかし造り酒屋をはじめ質的にはよい町家もあり、国道により多くが潰されなかったら素晴しい町並が残っていただろうことが容易に想像できた。
 
 
 

訪問日:2005.12.11 TOP 町並INDEX