本宿の郷愁風景

群馬県下仁田町宿場町 地図 
 町並度 7 非俗化度 6  −中山道の裏道に位置づけられた街道の宿場町−





 本宿は下仁田の市街地より西に約8km、鏑川の谷間に開ける街村だ。ここからさらに西に向うとけわしい峠道が控え、その先は信州佐久となる。
 この本宿集落には古い町並として見応えのある風景が展開していた。鏑川左岸に展開し、一本の街道集落らしいその佇まいは、特に集落西部で家々の間口も広く、立上りも高く、迫力を感じさせてくれる。関東地方らしい出桁の平入り町家が所々に土蔵も挟みながら密度濃く展開し、二階部に木製の欄干を持ったものも少なくない。これは遊里を含めた繁華街でよく見られる外観だ。漆喰の塗屋造りや洋風看板建築もあり、町の中心といった風情も漂う。こんな山峡の地に突如現れるのは、突然変異のようで驚きを感じさせる。
 これは上州と信州を結んでいた街道の宿場町の名残である。ここで信州側に二手に街路が分かれていた事もあり賑った。付近に西牧関所と呼ばれる関所があったが、碓氷峠を越えていた本線に設けられていた横川関所より旅人や荷の改めも穏やかであったことからこの街道は中山道の裏街道として位置づけられ、特に女人にとって重宝されたという。
 

 




下仁田町本宿の町並


 一帯は米の自給が出来ない地であったので、他国とを結ぶ幹線街道が通じていたことは非常に好都合であった。信濃佐久地方からの米はこの本宿や下仁田の町で各地に分散され、代りに近隣の農産物や薪などが取引されたという。 本宿では地元が古い町並として認識され、一部では外来客に対応する構えも見受けられた。しかしそれらはきわめて地味なもので、今後観光地として売出そうという空気は感じられない。その程度で良いと思う。ただ立地上過疎の地にあるであろうことは疑いなく、むしろ良く今まで原型を保って家並が残っていたなというのが正直な所である。








 この町並では街道沿いだけでなく鏑川を挟んだ対岸からも見ておきたい。狭い段丘にへばりつくように展開する姿が良くわかる。家並のすぐ川側は崖で、街道からは二階建でも川岸からは三階建になっているものもある。鏑川側は家が川岸にせり出し、石積が見られその上に家屋を建てた苦心が知れる。
 家々の間の細い階段を降りていくと、小さな祠が川に面している姿もあった。




鏑川に面しては崖家造りのような独特の風景が展開していた

訪問日:2008.10.12 TOP 町並INDEX