下野宮の郷愁風景

茨城県大子町【在郷町・河港町】 地図 
 
町並度 4 非俗化度 10 −久慈川水運の最上流点−





 







 水郡線の常陸大子駅の北隣に下野宮という駅があり、茨城県最北の駅となっている。駅前にはある程度の集落のまとまりがあり、東側を久慈川が流れている。
 久慈川水運の最上流地であり、『水府志料』によると「久慈川筋運漕此処より初て通ず、これより水上は至て水浅く、尚又大石共多くして、舟更に通じがたし」と記述される。しかし奥州との境にも近いここまで舟運があったことは驚きである。村の北寄りには河岸が設けられ、周囲農山村からの物資が集まりここから積み出されたり、生活物資が荷揚げされていたのだろう。地形的にもここから北は峡谷状になり平地が乏しくなるため、交通の拠点となるのは自然なことだったようだ。
 現在残る町並でやや特殊に感じる点がある。駅前から通じる東西の通りがあり、ここに旅館や商店などもあって集落の中心であることは間違いないのだが、線路より南側(久慈川側)に一回り細い道があり、そこにも街道集落的な家並の展開がある。しかも洋風の外観をした銀行か郵便局を想起させる建物も残っており、かつての中心街だったであろうことがわかる。一部にはかつて茅葺だったと思わせるトタンに覆われた屋根を持つものもあった。
 これはおそらく河岸があり川運が主な輸送手段だった頃の中心街だったのかもしれない。やがて鉄道が開通すると河岸は必要なくなり、賑わいは駅前の新しい通りに移っていったと。そのように推測される。
 古い集落の中心に残る家々を見ると、まずまず裕福なところだったのではないかと思われた。






訪問日:2014.05.04 TOP 町並INDEX