大町の郷愁風景

長野県大町市<商業町> 地図 
 
町並度 5 非俗化度 5 −塩の道の中継地−




塩の道博物館として公開される平林家 塩蔵など貴重な建物も敷地内に残る



 大町市は県北西部、市街地付近は松本盆地から続く比較的平坦な土地、以北は高原地帯となり白馬村に接している。また西部は飛騨山脈に繋がる山岳地帯で富山県に接し、立山黒部アルペンルートの東の入口となっている。
 地形的にも平野部の北限、西には重畳と連なる山岳地帯、東にも山地を控え物流の集うところ、また中継されるところとして古くから賑わうところであった。
 その中で最も大きな要因は千国街道を経由しての塩の輸送であった。糸魚川街道とも呼ばれたこの街道は日本海への道でもあり、松本藩内への塩のほとんどはこの街道を経由した。塩のような重量物は主に牛を使って運ばれたが、鮮魚や牛の通行の困難な積雪期にはボッカと呼ばれる人による輸送も行われた。鮮魚は大急品と呼ばれ、糸魚川から大町まで夜を徹して丁度1日で運び込まれていた。塩魚は3〜4日、塩は5〜6日の行程であった。
 途中千国で改めを受けた荷はここで消費されるものもあり、また積み替えられて松本方面に運ばれるものもあった。街道としては間宿の扱いであったが、山間部からの出口にあたっていたことと、糸魚川と松本の中間に位置していたことから荷継問屋が発達した。塩問屋をはじめ多くの商い人があらわれ、商業町として大きな発展を見た。また地場産業として煙草や生薬、麻、楮・和紙などがあり、それらの商人も多かった。
 大町の市街地はそれほど広範囲ではないものだが、その商家が最も多く建っていた付近は商店街となっており、一部はアーケードに覆われている。そんな中にも商家建築が見られ、一部には本うだつを立上げた本格的な旧家も残っている。また派生する路地には商家の裏手の土蔵が長々と連なり、風情ある一角を造りだしていた。
 そんな中に、塩問屋として栄えた平林家がある。資料館として公開されており、帳場や屋敷をはじめ、塩を貯蔵し「にがり」を集めた貴重な構造の塩蔵も現存している。訪ねる価値のある施設である。
 大町は周囲を山に囲まれていることもあり、伏流水が豊富で多くの造り酒屋もあった。平林家のパンフレットによると商店街の街路の西側は男清水、東側は女清水と呼ばれ水の硬度がそれぞれ異なることのことである。土蔵の連なる一角に清冽な水の流れがあって敷地を貫いており、川魚が棲みついていると案内板に書かれていた。そのような水の豊かな土地であったことも、町が発達した要因であるのだろう。
 
 
 

 


中心商店街に残る商家群 一部はアーケードに隠れているのが残念




裏手の土蔵が大規模に連なる事からも商業の栄えをうかがい知ることができる


訪問日:2014.09.15 TOP 町並INDEX