新町通界隈の郷愁風景

京都市中京区・下京区<商業都市> 地図
町並度 5 非俗化度 4 −都心に身近な京町家の佇まい−






松坂屋(新町蛸薬師上ル)  都心部にありながら古い町並の雰囲気を感じされる通りです。




 四条通西洞院東入下ルにあるこの路地は全く予想外に展開する古い町並です。 綾小路通の豪商杉本家




典型的な京町家である吉田家。正面と台所を掲載します。 
 

 この周辺は京都市の中心部である。都心部でありながらこのエリアにも伝統的な町家建築が多く残り、他の都市では見られない町並景観の展開を示している。戦災に遭わなかったことだけでなく、住民が伝統を重んじ文化を守ってきたことの表れである。祇園祭の鉾町でもあるこのエリアは、少し眼を変えて歩くだけで新たな発見が出来るだろう。
 ビジネス街、そして大型の店舗が並び車の途絶えることのない四条通。風情ある京都の路地風景は、この通りから一歩小路に足を踏み入れた所にも展開する。
 膏薬図子と通称されるこの路地は車の進入も容易ではないが、それが幸いして抜本的な新築改築がなされなかったのだろう、眼と鼻の先が四条通とは思えないほどの静寂さが支配する小路である。これを綾小路通まで抜けると杉本家住宅がある。屋号奈良屋、代々呉服商を営んだ豪商であり、市の文化財に指定される見応えある旧家である。
 四条通から新町通を北に取って返すとまた町並が展開している。この新町通は上賀茂から伏見区内までを南北に貫通しており、北大路の南の鞍馬口通から三哲通(現在の京都駅付近)までは「京都坊目誌」にも紹介されている由緒ある通りである。この頃は町尻小路と呼ばれ、平安京中期頃から商業地として繁栄の中心にあったといわれる。新町通と呼ばれるようになったのは18世紀後半になってからのようで、恐らく豊臣秀吉の京都改造以後のことだと考えられている。
 蛸薬師上ル右側に圧倒的な存在感を示す商家の建物は松坂屋(現在の百貨店)、創業は慶長16(1611)年という老舗である。また左に眼を向けると吉田家がある。現存する京都を代表する町家であり生活工芸者館として公開(要予約)されている。町割そして間取りまで規格化された京町家の中にあって、その趣を頑なにまで守り続けている。その姿は炊事場に典型的な形で現れていた。ガス化されておらず竈が健在であり、玄関からの通りニワは天井まで吹抜けである。これは一旦火災が発生すると延焼を免れることの出来ない町場のこと、炎を高く上げて壁面に燃え移るのを遅らせる智恵でもあるのだ。床には裏庭の土蔵への物資搬入のため、石畳となっている。
 密集した家屋のため光を取り込むことの重要性も感じさせる。二つの中庭越しに日光を部屋の中に取り入れる工夫は、京町家の特徴である。典型的な町家の姿を体感できるものとして、訪問することをお勧めする。
 


訪問日:2003.10.05 TOP 町並INDEX