篠島の郷愁風景

愛知県南知多町【漁村】 地図
 町並度 6 非俗化度 8 −三河湾の入口に浮かぶ島の密集漁村集落−
 



新漁港付近から見る漁村風景




 知多半島最南端の師崎から南東約3km沖に篠島がある。ちょうど三河湾の入口に位置している。
 古代より周囲の海は好漁場として知られ、伊勢神宮への鯛の奉献も記録に残るところでは少なくとも鎌倉期から今に続いている。これを通じて島は神宮との深いつながりを持っており、島の中央にある神明神社は神宮に合わせて20年ごとに遷宮(社の建替え)が行われているという。他にも複数の寺院があるなど、狭い島の割に多くの寺社があることからも歴史性が感じられる。
 江戸期そしてそれ以降も、近海に好漁場があることもあり純粋な漁村として発展した。
 島はやや南北に細長い形をしており、北端部は小島との間を埋め立てた土地となっている。島の面積の2割ほどを占めるくらい大規模なものであり、造成と同時に漁港が移築され、新しい住宅地としても利用された。民宿の多くもこのエリアにある。
 一方それ以外のところに展開するの路地が縦横に巡る典型的な密集漁村集落だ。乗用車の通れる道はほとんどなく、一部は斜面上にも展開しており坂道の路地もある。特に古い港の周辺である西側では下見板張といわれる板を重ね合わせた形の建物が多く、集落景観の個性的な姿を見せている。高低差のあるところは階段や石垣で克服されているが、やや形成時期が新しいと思われる東側の集落では、コンクリートを打ちっ放してその上に二階屋を建てるといった形式のものも幾つか見られた。また、集落西側の一部には、土蔵を従え、広い庭を有する邸宅が一軒だけ見られた。江戸期には一部に廻船業を営む者もあったとのことだが、その名残なのだろうか。
 フグ料理をはじめとする魚料理、夏場は海水浴などで観光客の訪れも多いが、北に浮かぶ日間賀島と比較するとそれほどでもなく、集落内は素朴さが保たれている。密集振りはなかなかのものであり、町歩き、漁村集落巡りの目的だけでも訪ねる価値のあるところだ。






島の西側の古い集落では狭い路地が縦横に巡る







訪問日:2014.11.24 TOP 町並INDEX