平出の郷愁風景

長野県塩尻市<農村集落・街道集落> 地図 
 町並度 5 非俗化度 8  −本棟造りの農家が多く見られる中山道沿いの集落−




 
 
本棟造りの建物が多く見られる平出地区の集落風景


 塩尻市平出地区は市街中心から2km余り南西に位置し、周囲は田園地帯となっている。
 地区内を古くは中山道が横断し、江戸方に塩尻宿、京方に洗馬宿を控えそのほぼ中間地点である。元禄7(1694)年には洗馬・本山両宿の助郷にも指定された記録がある。
 ここに集落が発達したのは豊富な水があったからだろう。平出の泉と呼ばれる小池からは豊かな水が湧き出し、水田を潤し生活用水として利用されてきた。池から坂を下って集落に入ると、街路に速い水の流れがあり清涼感を覚える。水神様を祀った石碑などがあり、水源と水を大切に扱われていることがわかる。この付近から妻入りで緩い傾斜の屋根、その頂部に雀踊りと呼ばれる独特の棟飾りが特徴の本棟造りの旧家が目立ってくる。本棟造りは外見的に非常に豪勢な印象を抱かせるものだが、事実幕末までは有力な豪農や商家にのみ藩庁から建築が許可されていた。明治に入りその見映えに倣って似た建物を建てる農家も多く出てきたというが、しかしそれなりの財力がないと不可能なことだっただろう。
 地区には10軒ほどの本棟造りの建物があり、集落の規模からすると密度が高いと言える。瓦を葺いた板塀を巡らせた邸宅、大きな土蔵を従えた家などがあり、水利に恵まれ裕福な農家が多かったためと考えられる。
 集落北側には平出遺跡公園と名づけられた公園がある。これは地区内で発掘された縄文時代の住居などが復元展示されたもので、現在残る町並と直接の関係はない。しかし、古代遺跡に注目されたその影響もあるのか、集落内の本棟造りの建物などの保存の動きもあるという。
 小さな集落ながら見応え感のある家並があり、水の風景もそれに潤いを与えているように感じる。私は時間の都合もあり遺跡公園は訪ねていないが、公園そして周囲の田園風景も含め訪ねる価値のあるところである。




土蔵を従えた邸宅も見られる



 




 床尾地区の岩垂家(登録有形文化財)

訪問日:2024.05.31 TOP 町並INDEX