白金の郷愁風景

東京都港区【住宅地・商業地】 地図 
 
町並度 4 非俗化度 6  −台地上の邸宅地と谷間の看板建築群−





 白金地区は大まかには品川駅の北西に位置し、南半分は高輪地区から連なる武蔵野台地の末端であり、北部は古川が台地を開析した谷間となる。一様に市街地となってしまった今では地図を見るだけでは一見そのような地形の変化は想像しにくく、実際足を踏み入れてみるに限る。
白金二丁目の町並 坂道に沿い長々と塀を連ねる豪邸




白金四丁目の町並 白金六丁目に見られる坂道の煉瓦塀
 
 
 2〜4丁目が台地上の邸宅地、5・6丁目がその北側の谷間の商業地であり、対称的な町の姿が見られる。
 前者では坂道が多くを占め、一部を除いて迷路状の細道も多い。坂道には名称が付されているものも少なくなく、その中でも三光坂と呼ばれる街路が町並探訪の上では印象的であり白金の山手地区らしい佇まいとなっている。地下鉄白金台駅から北東一帯のこの地区は、かつては郊外地でまばらに住宅が点在しているに過ぎなかったが、明治末期頃から急速に新興住宅地として発展した。代議士や実業家をはじめ、華族の豪邸、軍人などがゆとりのある広い敷地を利用して邸宅を設けた。今歩いても厳かな塀に囲まれた屋敷、洋風の外観を持つ大型の住宅などが多く見られ、それらから歴史深さを感じることもできる独特のエリアである。
 一方、北側の5・6丁目にかけてはやや急な下り坂となり、東西のバス通りにぶつかる。この通りにはやや古びた商店が連なり、それらの多くが看板建築という木造建築の前面に胸壁を立ち上げた独特の造りとなっている。連続性の高い箇所もあり、都内でもその密度はかなり高いほうであろう。もとは色々な品物を商っていたのだろうが、不動産屋や理容室などとして再利用されている姿、また八百屋や豆腐屋などといった昭和的な商店として今も営業されている例も少なくない。中小都市ならこのような店舗は郊外型の大型店により駆逐されてしまうのだろうが、人口基盤の大きい東京では逆に残りやすいのかもしれない。そういう眼で見ると面白い都市の現象ではある。
 また一部には木造の古めかしい店舗も見られる。北里大学付近から渋谷区恵比寿3丁目の交差点付近、首都高速の高架の手前までそのような町並が続く。短い区間ではあるがいまや稀少価値のある一角だ。
 この付近はたまたま鉄道沿線からやや不便な位置にあることで、抜本的な再開発計画から免れ続けたのかもしれないが、将来にわたってもこの風景が維持されるとは到底思えない。貴重な記録となってしまうのは少しでも後であってほしいものだ。

 
白金六丁目の町並




白金五丁目の町並 恵比寿二丁目の町並

訪問日:2012.05.26 TOP 町並INDEX