白根の郷愁風景

新潟県白根市【在郷町】 地図 <新潟市南区>
 
町並度 5 非俗化度 9 −新田開発を契機に発達した中洲上の町−
 


 
白根魚町の町並

 

 新潟の市街中心から南へ15kmほど、中ノ口川右岸に白根の市街が展開する。中ノ口川はかつて信濃川の本流であった時期もあり、現在は分流後再合流する形となっている。白根付近は両河川の中洲的な土地となっており非常に低湿で、近世初期頃までは常に治水が課題であった。江戸初期頃に付近の沼沢地が相次いで干拓され新田となり、米を中心とした広大な農地に整備されている。
 村上藩領であった当地は元禄2(1689)年に市立てされ、以後六斎市と呼ばれる定期市が開催され、近隣農村との物資の取引が行われた。新田開発で増加した人口もあり町場として次第に発達していった。
 また中ノ口川は水運に利用され、白根は中継地となっていたため川港としての賑わいもあった。
 白根というと凧合戦が最も良く知られるところだが、凧の生産以外にも仏壇、鉄器など地場産業が古くから発展し、その知名度は高いものがあった。特に元禄年間から始まったといわれる仏壇は現在も伝統産業として息づいている。江戸後期には京都の技法を取り入れるなどして価値を高め、特に東北方面に販路を拡大し一大産業として定着した。
 旧市街は中ノ口川の堤防に平行した形で、魚町付近から南に1km近くにわたって町並が連なる。現在は商店街となっており、鋼鉄製のアーケードが設置された区間も多くその点が惜しまれるのだが、構成する建物は伝統的な構えを残すものが多い。妻入りの二階部に見える真壁、一部に残される雁木などに地域色が感じられる。またアーケード下の商店にも昭和レトロ的価値があるといえ、一部には看板建築の店舗もある。現在は営業されていない店も少なからず眼につくが、かつては多くの客で賑わっていただろうことが想像できる。
 古い町並としても十分魅力を感じることのできる素材が残されているといえよう。地元の方々がそれに気付かれることを期待したい。
 











訪問日:2017.04.29 TOP 町並INDEX