志和堀の郷愁風景

広島県東広島市<在郷町> 地図
 
町並度 5 非俗化度 8 
-町家建築群の外周に茅葺民家の点在する田園風景が展開する-


 

志和堀の町並
 
 


 現在は東広島市域となっている志和町は、市の中心である西条盆地から山一つ北に隔てた地で、盆地状の平野部に水田が広がっている。山陽自動車道のインターチェンジも近く、都市部からも30分程度で到達できる所であるのに、非常にのどかな田園風景が展開するのは意外である。
 そして所々に茅葺の民家が散在しているのも特徴である。ここを含む賀茂台地は、県内でも比較的よく茅葺の家が残っているが、ここではその密度が濃く、山を背景とした田園によく溶け込んでいる。
 古代には志芳荘という荘園も置かれた歴史の古いところであった。
 東部の志和堀地区は町の中心であったこともあり一際その風情を増す。江戸時代には堀市と呼ばれ東西二町、南北三町五十間の市場町が形成されて居た。明治にかけても繁栄は続き、最盛期には61軒の店舗、小間物から酒、醤油、豆腐、蒟蒻など売る商店が並び、また木挽や大工もあった。賀茂地域北西部の物資がこの盆地に集まり、在郷商業町として位置づけられていたという。
 その名残も町の中心に古い町並としてわずかに窺える。平入りで切妻一部は入母屋のものも含め伝統的な町家建築が東西に続く街路に沿って残っていた。中二階のものは少ないからほとんど明治以降の建物であろう。そして屋根は大半がこの地域独特の赤瓦で葺かれている。賀茂地方独特の町並風景を見せていた。
 町のシンボルといえるのが千代の春酒造の建物だ。白壁の大きな土蔵を見せ、母屋も茅葺の厳かな佇まいで一種厳かな雰囲気を漂わせている。その前を流れる小川は毎年初夏には蛍が舞い、秋は彼岸花が咲き乱れる。
 このような原風景的な風物が都市部の近くに見られるということは、もっと認識され大切にされてもいいはずだ。茅葺の民家も年々姿を消しつつあり、失われつつあるという。これからもこの町に着目して動向を見守りたい。




 志和堀の町並★ 志和堀の町並




志和堀の周辺には厳かな塀に囲まれた茅葺屋根を持つ屋敷が多く残されている。 

※★印は2005年9月23日、その他は同年4月29日撮影の画像です。
訪問日:2005.04.29
(20005.09.23再取材)
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