三日市の郷愁風景

広島県庄原市<商業町(市場町)> 地図
 
町並度 6 非俗化度 10 −市場を中心に繁栄した備後北部の町−


 

三日市町の町並


 庄原市は中国山地の懐に開ける盆地に立地する町で、近年では県立大学が置かれるなど備後北部の中心地として新たな展開を見せている。市街地周辺の丘陵地帯では冷涼な気候を利用して酪農も盛んである。
 一方では江戸時代に源を発する古い町並も残る。市役所などのある本町地区は周囲よりやや高い台地上にあるが、その西側、小さな谷を隔てた三日市地区である。
 古い町並は東西に約300mにわたって続き、西に向かい緩やかな坂となっている。そしてその両側には、漆喰に固められた袖壁を両端に有し、出格子を張り出させた町家がある程度連続して残っていた。おそらくは明治以後になって建てられたものと思われるが、連続性が高いので見映えがする。2階の建ち上がりはほぼ一緒だが坂道であるため屋根のラインが階段状になっているところに特徴が感じられる。リズミカルに連なる甍の印象である。
 江戸時代、三日市村は庄原村と戸郷川で隔てられ、川の近くまで町家が連なり市場町として栄えていた。備中新見とを結ぶ往還上にもあったため通行人も多く市場町の立地には好都合だった。市は三日市とはいいながら四の日に立っていて、塩市と呼ばれ近在の村々の特産品を商っていたらしい。九の日に市が立っていた東隣の庄原と商圏争いから紛争も絶えず、代官の和解を必要としている。それほど当時は勢いのある町だったのだろう。
 この街路は国道183号線として一時交通量の増加が著しかったが、昭和53年に南側にバイパスが開通しているため現在は静かな生活道路だ。バイパスでなく道路拡幅をしていたなら間違いなくその時に町並が失われていただろう。誤った開発をしなくてよかったと今更ながら改めて感じた。
 








横路地に入ると奥行きの深さが判る

※2023.04最終訪問時撮影

訪問日:2004.12.23
2023.04.16最終訪問
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