庄川の郷愁風景

富山県庄川町【現・砺波市域】<商業町> 地図
町並度 4 非俗化度 10 −庄川の木材流下により繁栄した町−




かつての町の中心・金屋の町並




金屋交差点付近には豪壮な邸宅も点在する。特に左の旧家は格子も美しく保存され、くぐり戸式の玄関も現役であった。


 庄川の谷口となる位置、砺波平野の南東端にこの庄川町はある。この町は庄川を使って流れ下ってきた五箇山・飛騨方面からの材木によって潤ったという特異な歴史を持つ町だ。加賀藩内で木材の需要が高まったためで、現在の町の中心である金屋地区に藩は貯木場である材木囲場を設置し、各地へ送られた。
 ここが材木の集散地とされたのには地形的な要因のほか、ここを起点に砺波平野各地に用水が張り巡らされていて、それを利用したためである。越中の平野部は背後に険しい山岳地帯があり、大量の雨や雪解け水が一気に平野部に流れ下ることから水害が絶えず、治水は最大の課題だった。藩は金屋地区から西へ幾本にも分れていた支流を締切り、庄川本流に一本化するという大土木工事も行っている。このように良くも悪くも庄川と切っても切れない関係にあった。
 庄川上流の飛騨方面からの流木は明治以降も続けられ、木工産業も盛んになった。近くには木彫産業で繁栄した井波があり、需要は尽きなかったようだ。
 現在の町役場の辺りに用水の一つ二万石用水が流れ、その南側が古い地区である。国道158号線の金屋交差点辺りを要として、県道40号線から国道471号線に跨って街村的に残る。但し古い町並としての連続性はやや失われ、所々に町家建築が残る程度であるが、交差点の西側の緩い坂道沿いには格子の見事に残る間口の広い旧家が見られた。木材の取引で富を築いたお宅だろうか。
 国道158号線は砺波平野から飛騨方面への幹線道路であり、この町は現在では完全な通過点になってしまっているようで古い市街地から余り活気が感じられないのが気になる所であった。



訪問日:2005.10.10 TOP 町並INDEX