修善寺の郷愁風景

静岡県修善寺町<温泉町> 地図 <伊豆市>
 
町並度 4 非俗化度 3 −多くの著名人も訪れた伊豆地方随一の温泉街−





 旅館建築をはじめ歴史を感じる佇まいの見られる修善寺の町並

 


 
文化財の宿・新井旅館 


 修善寺は伊豆地方を代表する温泉町の一つで、三島からは伊豆箱根鉄道で結ばれ東海道本線から直通の特急列車も運行されている。沼津市街地で駿河湾に流れ込む狩野川の支流・桂川の谷沿いに温泉街が展開する。
 温泉は9世紀に弘法大師により発見されたと伝えられており、豊臣秀吉関連の古文書にも温泉の記述があるという。その後江戸期まではいわゆる木賃宿が主で、自炊しながらの湯治客がほとんどであったが、明治に入ると温泉保養地として本格的に整備され、文人墨客の滞在も増えた。特に大正13年伊豆箱根鉄道が修善寺まで開通すると多くの訪問客が訪れるようになり、さらに東海道新幹線の開通によって観光地としての位置を確定させたといえる。
 産業としては、古くから木材の産地として知られており、江戸や沼津に材木や薪炭が出荷されたほか、和紙の生産も盛んで修善寺紙と呼ばれ、近世になると一時幕府の御用紙ともなった。薬袋紙や摺袈裟紙などの特殊な紙を開発し、土佐や越前など他の大生産地に技術が伝承されたという。
 温泉街の中心は弘法大師が発見したといわれる独鈷の湯、山手にあるこれも弘法大師の開設とされる修禅寺付近で、近くにはこの温泉地では最も高級な旅館と思われる「新井旅館」が風情豊かなたたずまいを見せている。
 全体的に観光地といった風情が濃い一方、一部は他の施設に更新されているが古い旅館の建物、老舗商店など歴史の深い温泉町であることは歩いているとよく伝わってくる。
 
 
 



 
 

 桂川沿いから見ると、川沿いの景観を求めて各旅館が場所を競った様子がよくわかる。また少し下流側に足を向けると、建ち並んだ商店や土産物屋などの建物がなどが川側にせり出し、一見崖家造りのような様相を示していた。狭い谷ではないが旅館などが建てられる土地は限られており、苦心のほどがうかがえるようであった。

訪問日:2022.04.11 TOP 町並INDEX