三須の郷愁風景

岡山県総社市<農村集落> 地図
 
町並度 5 非俗化度 10 −吉備路の農村集落−

山陽自動車道の倉敷インターから北に小高い丘を越えると、周囲には穏やかな田園が展開し、吉備路というにふさわしい風景である。南端付近に旧山陽道が東西に走っていて、近世までこの地域が東西の交通の幹線道路に面していた。


厳かな門と塀に囲まれた旧家






 この三須の町は、低い丘陵の北側に面し日当たりがよく実に平穏そうな集落である。
 自然発生的に形成されたらしく、集落は山裾ラインに沿いやや東西に長く、街路はそれに従い曲折している。そしてその周囲には、土蔵を中心とした昔ながらの家並がひっそりと残っていた。
 歴史的には江戸期に一時期陣屋が設けられていたことが特筆される程度で、商業も栄えず大きな町場として発展することもなく、ほぼ純粋な農村集落であった。幹線道路などによって潰されることもなかったため、古き時代の農村風景が残っているのだろう。
 土蔵建築以外にも入母屋の屋根を持ち、広い敷地を有する豪農であっただろう旧家、長屋門風の厳かな門を構えた屋敷などが何軒か見られるのも、商業町ではなく農村の表情だ。総社の市街地からも近い位置にあり、このような集落風景が残っているのは幸運と言えるだろう。
 ただ一つ残念なのは、この町の中心を東西に広い道路が分断していることだ。最近建設されたものらしい。一部の旧家はそれに伴い曳き家して、道路沿いの不自然な位置に厳かな門が据付けられている風景などもある。近くには近代的な国民宿舎の建物、ガソリンスタンドやコンビニなどがあり、この地区だけが浮島のように一昔前の姿を留めているようであった。






土蔵を中心に風情ある路地も残る。


訪問日:2006.01.22 TOP 町並INDEX