外泊の郷愁風景

愛媛県西海町【漁村】 地図 <愛南町>
 町並度 6 非俗化度 4  −地形克服によって生れた石垣の集落−

         



愛媛県南部の海岸線は半島と入江が交互に連なり、平地も乏しく嶮しい地形が続く。半島部には小さな漁村が数多く存在する。その姿は様々であるがここで紹介する外泊集落はその厳しい自然条件を物語るものである。
漁港付近から見る外泊集落の風景








 


 この辺りの村々は古くからほぼ漁業一本で生計を立てて来ており、海とともに歴史を刻んできた。また平地が乏しいため水田には不向きな地形であり、斜面上の段々畑が発達している。
 外泊を含む西海町域は宇和海に突き出した細長い半島であり、集落はどちらかというとその東側、内海に面した位置に多い。その中でも福浦には遠見番所や船番所、高札場などが置かれ中心的な集落であった。
 一方西側は外海に面しており、殊に冬期には北西季節風が卓越して風波が遮るものなく押寄せる。西海岸の古くからの集落として内泊があった。特に西岸は山地が急斜面となって海に没するので集落形成には地形の克服が必要であった。内泊にはその特徴が目立たないが、南に隣接する外泊集落では各戸は石垣に防禦され、独特の集落景観を示していた。
 この外泊集落は幕末期に内泊の人口が増加したため分村したものであり、その地形的条件は内泊よりもさらに過酷な急斜面であった。そこで小川の谷を埋立てにより浅くして宅地となりえる部分を拡大し、そして建物を建てるための平地を確保するため石垣を積上げた。内泊からの移住を終え村の体裁が整ったのは明治12年頃と言われる。
 石段を歩くと覆い被さらんというほどに積みあがっている石垣は、もちろん季節風を遮る目的もあるのだろうが、集落内を歩いていると平坦地を設けるための苦心の策でもあったことがわかる。そして海側に面した家々の台所の付近だけ石積が切り欠かれているのは、ここから海を見やり出漁の可否や、主人の出漁、そして漁からの戻りなどを見守るためのものである。
 石垣の里と銘打って案内板が立てられ、また集落内には民宿などもでき、随分交通の便の悪い場所にあるにもかかわらず訪れる人は少なくないようだ。しかし観光地といった雰囲気とは程遠いものであり、石垣集落の魅力を存分に味わうことができる。
 訪ねた時は石垣は全く不要なほど穏やかな日で、付近の山々からは鶯の鳴声がしきりにしていた。






訪問日:2009.05.04 TOP 町並INDEX