喜多方北郊の郷愁風景

福島県喜多方市<農村集落> 地図(杉山・西原)地図(三津谷)
 
町並度 7 非俗化度 6 −農家が競い合って建てた土蔵群−





杉山の町並 杉山の町並


杉山の町並 西原の町並


 蔵の町として全国にその名が知られている喜多方市。市街地にも数多くの土蔵建築が残存しているが、この地方では商人のみならず農家など一般家庭でも蔵を建てることが一つのステイタス・シンボルとなっていた。そのため郊外の農村集落においても、驚くべき土蔵の含有率がある。ここでは中でも代表的な杉山・三津谷の集落を中心に紹介する。
 杉山集落は喜多方の市街地から約5km北の郊外にある農村。会津盆地がいよいよ尽きて山形県境の山岳地帯になろうかとするところである。集落規模は至って小さく、わずか20戸ほどだが、その全ての農家が通りに面して土蔵を従えている。その姿は喜多方市内で見られるものとは随分趣が異なる。母屋は開放的な前庭を従えて通りからはぐっと引いた位置にある一方、土蔵は街路にせり出さんかの勢いで建ち並んでいる。しかもその規模は農家の収納蔵というような概念からは程遠い、非常に豪勢なものであり、観音開きの戸が設えられている。通りからはそれらの土蔵だけしか眼に入らないため、非常に特殊な町並景観となっている。
 或るものは屋根部分を一段持上げ、また他のものは「かぶと型」のトタン屋根を葺いている。これはもとは茅葺だったのか。いずれにしても冬の豪雪に備えた造りなのだろう。と同時に、喜多方の街中でもあったように、各家が土蔵を建てることに生きがいを感じ、ある時期に競って建てられたことが推測される。
 周囲は水田が広がり、北側には山を背負っている。そのような所に都市部でも見られないほど豪華な土蔵が連なっているというのは他に例を見ないだろう。
 また、ここより少し山間部に入った西原という小さな集落にも、鏝絵のある土蔵などが散在していた。
 杉山から1kmほど市街地寄りには三津谷という小さな集落がある。ここは家々全てが煉瓦蔵というこれまた特殊中の特殊といえる集落である。喜多方一帯は明治時代になって西洋の文化を積極的に取り入れ、この集落には煉瓦工場があった。市街地に赤い色調の瓦が多く眼につくのも、ここでその瓦が生産されていたからであった。
 ここで紹介した以外にも、喜多方市の郊外には土蔵造りの収納蔵、座敷蔵が数多く残っているという。田園と山々を背景とした土蔵風景。貴重な文化遺産としていつまでも残していただきたいものである。
 


三津谷の町並 三津谷の町並

訪問日:2005.05.20 TOP 町並INDEX