春照の郷愁風景

滋賀県伊吹町<宿場町> 地図 <米原市>
 町並度 5 非俗化度 8  −北国脇往還の宿駅−












 

 近江・美濃国境に聳える伊吹山を望む田園地帯、雄大な風景を背景にしてこの春照地区はある。
古くは水上と記し、現在もすいじょうと読む。彦根藩領坂田郡に属していた。
 中山道の関ヶ原宿から北国街道の木之本宿まで北国脇往還という街道があり、東より越前方面への旅客が多く利用した。中山道と北国街道の追分は鳥居本宿(現彦根市域)にあるのだが、そこを経由すると三角形の二辺を辿るような道筋になるため、伊吹山の麓を短絡する脇往還が発達したわけだ。
 春照には宿駅が置かれ、本陣も置かれるなど本格的な構えであったという。これは越前や加賀の大名が参勤交代時に通行したためで、短い往還とはいえその果した役割は重要であった。多くの助郷を従え、大名行列の折には繁盛した。
 また、街道筋の利を得て宿泊業をはじめ酒や醤油などの醸造業、そして養蚕や製糸に携わる者も多く在郷商業町的性格もあった。もともと豊かな農地に恵まれており米や麦をはじめ菜種・煙草・桑などが盛んに栽培され村の経済の基盤となっていた。
 中山道の旧宿場町と比べるとその佇まいに大らかさが感じられる。大名通行もあったもののやはり脇往還らしく家々の間口制限なども緩く、土地に余裕もあったのだろう。妻入りの旧家が目立つのが印象的であった。また旧宿駅区間を外れた街道集落部分では、古くから豊かな農家であっただろう邸宅が連なっており、一部では煉瓦製の蔵を残す家もある。
 背景に伊吹山を望む地にあることもあり、旧宿場町らしくない牧歌的な雰囲気が感じられるところであった。


訪問日:2011.05.21 TOP 町並INDEX