粭島の郷愁風景

山口県徳山市 <漁村> 地図 <周南市>
 
町並度 5 非俗化度 9 −工業地帯の先に意外性に満ちた島の集落−

 


煉瓦を用いた塀が多く見られる粭島の集落風景


 
粭島(すくもじま)は徳山の市街地より南に5km余、逆三角形をなした小さな島で、島近くまで本土から半島が延びてきており橋で陸続きとなっている。
 藩政期は徳山藩領で『地下上申』では人口163と記録され、漁船13隻を有し漁業の島であった。かつて島内には狼煙場があり、南は野島から受け、その後は笠戸島の深浦に渡していた。
 集落は島の北岸に集中し、海岸線に沿い細長く展開する。北西端付近ではやや面的な集落展開があり、海岸に面して貴船神社がある。この神社は海上安全の守護神とされ、現在でも海中で神輿を担いで渡る貴船祭という奇祭が行われている。
 集落景観の特徴は、煉瓦や石材、特に煉瓦が多用されている点だ。主に塀に用いられているが、壁や蔵に使われているものもある。また貴船神社横にも長々と煉瓦塀が連なっている。これらは恐らく一時期流行のように用いられた名残なのか。島の集落としては珍しい風景に思えた。
 なおこの島はフグ漁発祥の地といわれている。明治期から中国近海をはじめ遠洋まで赴いて延縄漁を行い、下関に水揚げをしたとのことだ。フグは山口県内では福を呼ぶ魚ということでふくと呼ばれる。つい煉瓦塀などに関心が向いがちとなるが、建物自体も漁村としては立派な商家風の建物が散見されるのも、その恩恵によるものではと思われた。
 半島部には化学工場も見られ、島の集落風景とは対蹠的なものがあった。






貴船神社横の煉瓦塀












石蔵や石畳も見られる 石材も豊富に入手できたからか

訪問日:2019.03.24 TOP 町並INDEX