鹿野の郷愁風景

山口県鹿野町<宿場町・市場町> 地図 <周南市>
 町並度 4 非俗化度 10  −萩と山陽道を結ぶ街道の重要拠点−




 鹿野町は徳山の北約30kmの山間部、小盆地に町が開ける。中国自動車道が町を横断しているが中心街も静かな佇まいで、田舎町といった風情である。

鹿野上の町並




本陣も勤めたという旧家は荒れていた 
 

 
町並は旧道に沿い街村状に展開する。特徴的なのは屋根の瓦が山陰地方と共通する赤褐色の瓦に覆われていることで、山口県でも北西部の長門地区では一般的だが、周防地区では珍しい。それはここが街道を通して長門や石見と古くから通じていたことに関係するものと思われる。
 鹿野市と呼ばれる市が17世紀後半の貞享期に開かれている。当時属していた萩藩は農民が商いをすることを禁じていたのだが、特例が認められ各地に小さな在郷町が立地した。この鹿野市もそうした市場の一つで毎月3の日に開かれ、また盆地の中心にあることから周囲からの物資の散集地ともなり町が発達した。
 また山代街道と呼ばれる街道が萩城下から鹿野を通り、岩国に達していた。山代とは玖珂郡北部と都濃郡北部に跨る山間地域を総称したもので、鹿野はその中心の一つであった。藩政期にこの地方で盛んだったのが和紙製造で、山代紙の名で知られていたという。街道は山陽道とも連絡するため要人の通過も多く、本陣も置かれた本格的な宿駅の構えであった。
 密度が際立って高いわけではないが旧街道沿いには町家建築が随所に残る。妻入りが主体であるのはこの地方らしい特色であるが、それと赤褐色の瓦とが融合する地域はそれほど多くない。そうした意味で特色ある町並風景が展開していた。
 最も間口の広く、また風格のある妻入り町家が無住となり、また傷んでいる姿は見るに忍びなかった。この旧家は本陣を営んだこともあるといわれる。何とか町の沽券にかけて保存してもらいたいものである。





訪問日:2008.07.20 TOP 町並INDEX