摺沢の郷愁風景

岩手県大東町【宿場町・在郷町】 地図 <一関市>
 町並度 5 非俗化度 9 −奥州街道と海岸部との中継点にあった町−



 一関と気仙沼とを結ぶ大船渡線沿線にある摺沢の町。北上川の支流合流点で、街道の要衝地に当たっていたところである。




摺沢の町並
 

 仙台藩の支藩であった一関藩領で藩政時代を経過している。
 一関から現在の陸前高田を結ぶ今泉街道上に宿駅が設置され、またここから気仙沼に達する枝街道が分岐する追分であった。そのため町場が発達し、宿屋をはじめ各種商家も多かったという。当時の幹線道である奥州街道沿いの各町への海産物の輸送路となり、摺沢はその中継地としても栄えていた。
 また煙草を中心に米や麦などの穀類、繭、紅花などの農産業も発達し、それらを商うものも多い在郷商業町であった。 
 大正14年に大船渡線の駅が開通すると貨物・旅客の集散地として機能するようになりこの頃が最も隆盛期であったようだ。大船渡線の線形は奇妙な形をしており、この摺沢でほぼ直角に東から南へ方向を変え気仙沼に向っている。建設時に地元の有力者の勢力で敷設されたことによるらしいが、そのことで東方面の旧今泉街道沿いの村々の玄関口ともなっていた。
 古い町並としては、主に町の中心の交差点より南に分岐する国道456号沿いに残っている。気仙沼に向う道筋である。参勤交代の大名などの重要な通行のない街道であったため宿場町らしい遺構は残っていないが、商家の佇まいは色濃い。一部を除いて妻入りの外観を示す伝統的な家屋は店蔵も目立っていて、繁盛し賑わっていた頃の姿が想像できる。途中に不自然にカーブする箇所があり、ここにはかつて枡形として意図的に街路を折っていた名残なのかもしれない。
 

 







訪問日:2012.08.15 TOP 町並INDEX