正院の郷愁風景

石川県珠洲市<産業町・港町> 地図 
 
町並度 5 非俗化度 9 −諸産業が地道に息づいていた能登半島先端の町−


 

正院の町並



 能登半島先端の町・珠洲市の市街地は大きく3つに分れ、市役所のある飯田地区の東に接して正院地区がある。
 戦後暫くまでは正院村と呼ばれる独立した村(後に町)であり、江戸前期には既に町立てされていたという記録がある。
 正院村は隣接する飯田町・蛸島村よりは比較的商業町的色彩が強く、さまざまな産業も発達していた。付近一帯で盛んだった素麺生産を筆頭に、陶器などの窯業、酒造業、製塩業などがあった。漁業も行われていたが干鰯などの肥料や他の干物などに加工されることが多かった。それらは港から加賀や越中など近隣に売り出されていた。素麺は殊に販路が広く、蝦夷地の松前から但馬に至るまで日本海を経由して販売されていた。
 明治以降は林業も盛んになり、副業として漁業・蚕糸などの製造を行う家が多かった。参考までに大正7年の産業構成は、農林業383、牧畜1、漁業3、工業44、商業48であり海沿いの村でありながら田畑や山が稼ぎ代であったことがうかがえる。
 
古い町並としては主に県道沿いに見られるが、そこから海岸沿いに展開する細い道に沿っても随所に残っており、面的に展開している。前者では間口の広い商家風の建物が幾棟か残り、この町の中心街であったことがわかる。また妻入りで板貼りの渋い家並が展開する風景も後者を中心に見られる。
 能登半島も先端に近いこの付近まで来ると通過する観光者の車も少なくなり、静かで素朴な佇まいが展開していた。
 
 








訪問日:2013.05.02 TOP 町並INDEX