祝津の郷愁風景

北海道小樽市【港町】 地図
 町並度 4 非俗化度 6 −番屋がまとまって残る鰊漁業の町−




祝津の町並


 小樽市の中心から北西方向にバスで15分ほど走ると陸の終わりの気配とともに険しい山塊が海岸に立ちはだかってくる。この高島岬付近には水族館もあり、また近代的なマリーナも整備され夏を中心に観光客などで賑うところである。
 しかし、付近にはあちこちに平屋の古びた建物が見られる。間口が広く非常に立派なものだが、見た目が地味であるため一番に眼につくというほどではない。実はこれらは鰊漁が盛んに行われた頃の名残である。
 北海道日本海側の町はほとんど鰊漁業によって成立したといっても言い過ぎではない。これらは番屋といわれる独特の建物で、網元とそれに雇われた漁師が共同生活を送っていたものである。留萌の近くにある旧花田家番屋など、現存し一般公開される旧番屋もまだまだ多く現存している。この祝津でも鰊御殿と呼ばれる建物が年間10万人もの訪問客を迎え入れ、一つの観光スポット的存在となっている。しかしながらこの旧田中家は当初からここに存在したものではなく、積丹半島の泊村に明治30年頃に建てられたものを戦後になって移築したものである。しかし小高いところから港を見下ろすその建物は今や祝津のシンボル的な存在となっている。
 海岸線に残る他の旧家が、祝津に本来存在していた鰊御殿の数々である。或るものは入口に遊郭を思わせるアーチ型の木製の小屋根を設え、裕福さを主張しているようでもあった。また他の屋敷では、数棟の石造りの蔵を従え、そこに漁具などを格納していたのだろうと思わせる。戦後になって鰊がぱったりと姿を消しても、郊外に位置する祝津では宅地や商業地としての開発が及ばず、過疎の波にもさらわれない微妙な所にあったためよく旧態を留めたのだろう。
 訪ねたのは小雪舞う冬の日で、水族館や鰊御殿も休館、鰊で賑った当時の姿は偲ぶべくもない。建物のみが冷凍保存されたようなところであった。

 
 




裏手に倉庫や離れと思われる建物を従えた豪勢な屋敷が数棟残っている




丘の上に見えるのが鰊御殿と呼ばれる公開施設


 

訪問日:2008.01.03 TOP 町並INDEX