首里金城の郷愁風景

那覇市首里金城町他<城下町> 地図
 
町並度 6 非俗化度 3 −首里城の丘南麓に展開する石の風景−








首里金城町の石畳の町並


 那覇を訪ねる観光客の多くが訪ねる首里城跡は、世界遺産登録された琉球王国の遺構群の中心であり、最大の観光地となっている。15世紀の琉球王国成立後、大陸文化の影響を受け続けながら独自の政治・文化を築く過程で、各地に4つの城(グスク)が建設され、それを統括する王の居城として首里城が築かれた。ここではその詳細は省略するが、王国時代を象徴する遺産として訪ねる価値は高い。
 首里城内の建物は第二次大戦時の激烈な地上戦によりすべて失われ、現在見る王府の建物は近年に復元されたものである。遺産といいながらも実際古いものではないのだが、城の土台や周囲を固める石垣群は往時からのものである。この石垣こそが、他の城にも共通しまた特筆されるものと言える。
 本土に見られる伝統的な町並や旧家はほとんどが木造のものであり、街路も地道がほとんどであり主要街道の峠道など人馬の往来に困難をきたす区間が石畳などで被覆されるにすぎなかった。一方で琉球は石の文化といってもよいくらい石材が多用されている。琉球石灰岩という珊瑚に由来する岩石が豊富に採取されることから、塀やヒンプンと呼ばれる主屋前面の目隠し壁にも利用されていた。
 首里城を取囲む石垣もすべて琉球石灰岩の壁で、随所に門が復元されている。城らしく小高い丘陵に築かれ周囲は低くなっており、特に南側は急傾斜となっている。その一角の首里金城町界隈には、琉球石灰岩を多用した見応えある町並が残っている。
 金城町石畳道と呼ばれ観光地にもなっているが、観光客を迎合するような店舗はなく地元の方々が普通に生活されており、首里城の喧騒からは俄かに雰囲気が異なってくる。結構な急坂で一部は階段状となっているが、路面や塀はすべて琉球石灰岩で形成され独特の風情を醸している。王国時代の官道の名残で、一部には中世以前のものも残っているといわれている。赤瓦を載せた伝統的な外観の家屋も残り、眼下の市街地を望む風景は那覇を代表するものの一つであろう。
 石灰岩の石畳にはまた優れた機能がある。多孔質で通水性が高いことを利用し、石の下にさまざまな工夫をして雨水を濾過集積し、村井(ムラガー)と呼ばれる共同井戸に導かれている。島国の宿命として水を得ることの困難さを克服している。
 首里城の行きか帰りかはこの坂道を辿ることをお勧めしたいものだ。






石畳を巧みに利用した村井(水場)の遺構


首里城の外郭も重厚な琉球石灰岩の石垣で囲われている

訪問日:2013.01.03 TOP 町並INDEX