太地の郷愁風景

和歌山県太地町【漁村】 地図
 町並度 6 非俗化度 7 −捕鯨の町として古い歴史を持つ−

   
 太地町は県の南東部、太平洋に面する町である。
 小半島に町域を持つ小さな町ではあるが、鯨の町としてその知名度は不釣合なほど大きいといえる。メディアから取り上げられる事も多いこともあるだろう。
 しかし実際訪ねると、町の中心部は外向きの色は淡く、漁村らしい匂いが濃厚に漂っている町である。




   










 
 
 中世より鯨漁の盛んな土地で、江戸期になると水軍の合戦の如く大船団を組んで鯨を追い込んで最終的に銛でとどめを刺すという漁法をとり、黒潮の本流に近いという地の利も得て基幹産業に発展した。和歌山藩の保護も受け、鯨1頭で七浦潤うともいわれた。江戸前期の延宝期には、和歌山藩を通して宮中に、そしえ新宮城主を通して幕府に鯨肉が上納された記録が残っている。鯨方という組織が組まれ、ここ太地の他に古座、尾鷲の鯨方が和歌山藩によって支配されていた。但し、江戸末期になるとその経営は行詰まり勝ちとなり、この近海近くまで米国船が捕鯨に現れたり、悪天候での遭難など不運が重なって鯨方による捕鯨は衰退していった。
 明治になると株式会社の経営で捕鯨が行われるようになり、近代的な船舶設備を駆使して太地の入江の中に鯨や海豚を追い込んで捕獲する大規模な漁が繰り広げられた。
 国道42号線や紀勢本線の沿線から市街地は離れた半島部に展開しているため、この町に目的がない限り通過点にもならない位置にある。鯨の博物館などの観光施設はあるものの、古くからの漁村の町並に外来者の姿はない。役場のある付近は比較的新しい市街で整然とした印象だが、そこから南西に向けて展開する部分は古くからの市街地らしく、細い路地が主役の漁村らしい佇まいだ。格子や2階部の木製欄干が残る家屋が多く、ペンキ等で塗装されている姿は漁村らしい家並風景である。
 


訪問日:2015.12.28 TOP 町並INDEX